物価は高いが旅行者には優しい。スイス屈指の文化都市・バーゼルを行く
スイスで高いのは山だけじゃない
初めて訪ねたスイスは、ジュネーブ空港から鉄道で2時間ほどの田舎町でした。時期はちょうど今頃です。レマン湖北岸をひたすら東へと走る電車からの眺めは、雲と万年雪を冠した山並を遠景に、鈍色の静かな水面を湛えたレマン湖が延々と続きます。反対側には、斜面に作られたブドウ畑を度々見かけました。
欧州の賑やかな地方都市といった風情のローザンヌ駅、由緒ありそうな大屋敷を頂く山が間近に見えるモントルー駅を通り過ぎると、ずっと右手に見えていた水辺の景色が姿を消します。それからは、粗い岩肌の山が時折姿を見せる山間平野部になり、しばらく南下したところにある小さな駅で降りました。
山しかなさそうな町ですが、駅にキオスクがあるのはグーグルマップで確認済みです。スイスの物価は高いと聞いていたので、この日の昼は外食せず、スナック菓子で夕方の会食まで繋ごうという腹づもりでした。
キオスクの店内は明るく、オランダと似たレイアウトだったので、勝手知ったる足取りでスナック類のコーナーに行きます。腹持ちのいいプリングルスにしようかな~。
ロング缶を見つけました。
・・・え?
気のせい?
ありえない値段でした。このときのショックはかなり強烈で、「ユーロで一体いくらなんだ?!?」「円でいくらなんだ?!?」と軽くパニック状態になったため、スイスフランでいくらだったのかよく覚えていません。でも、当時のレート換算で500円台半ば、オランダの正価売りと比較しても、倍以上の値段でした。
うろたえながら隣に目をやると、袋入りのポテトチップスがいろいろ並んでいました。どれもミニサイズの小袋を倍にしたくらいの、なんとも中途半端な大きさです。値段はプリングルスの7割がけくらいだったと思いますが、袋の中身は半分空気ですから、これもありえない値段です。そもそも、少なすぎて腹の足しにならない。
いずれにせよ、出がけに夫が持たせてくれたスイスフランの小銭では足りません。レジで確認したところ、クレジットカードもオランダのデビットカードも使えないと言われてしまいました。この年になって、お小遣いが足りずに駄菓子屋で立ち往生する子どもの気分を味わうとは……。そのあと店内を3、4周した挙句、水とアメを買い、すごすごとホテルに向かいました。
途中で見かけたファストフードのSUBWAYでは、セール品でしょうか、ロング缶プリングルスより少し高いくらいのサンドイッチを宣伝していました。どう考えていいのかよくわかりませんでした。
翌日、お客さんのお土産の買出しに同行することになり、近場のスーパーを探したところ、Coopを見つけました。名前からして庶民に優しそうなので、少し気をよくして出かけました。店内は楽しい雰囲気で売り場面積もかなり大きく、品揃えも豊富です。皆さん買う気満々で、数ある通路を縫うように見て回られましたが、会社で配るのはやはりお菓子。スイスだけにチョコレートしかありません。
私は留守番の夫に頼まれたCaillerの板チョコを買うことにしました。やはり、オランダのスーパーで売っている普通の板チョコの倍くらいします。2度目なので仰天はしませんでしたが、「ここはホントにCoop?」という思いが沸々と湧き上がります。「スイス最古のチョコメーカーの!」「国外ではあまり手に入らない品だから!」「お土産だから!」と自分に言い聞かせ、4枚カゴに入れました(あとでカードの利用明細を見たら2000円でした。地元で買ってこの値段です)。