生々しい感情が蘇る。実物展示へリニューアルした「広島平和記念資料館」へ
世界で初めて核兵器が広島市へ投下されたのが、第二次世界大戦末期の1945年8月6日。誰もが歴史の授業で学び、その事実を一度は頭にインプットしたことでしょう。
しかし「どれだけ原爆について知っているか」と聞かれれば、多くを語れる方は少ないはずです。すでに70年以上が過ぎ、その記憶は薄れつつあるかもしれません。
だからこそ、その記録を伝える「広島平和記念資料館」に足を運んでみてはいかがでしょうか。同施設は2017年前にリニューアルされた東館に続き、2019年4月には本館も新たな装いとなり、リニューアルオープンしました。
今回、小学校で原爆について知ったという長男を連れ、実際に同施設を訪れ、滝川卓男館長からお話を伺ってきました。館内のようすと共に、ご紹介します。
なぜいま、よりリアルを重視してリニューアルしたのか?
広島平和記念資料館は東館と本館に分かれ、それぞれ以下のような展示が行われています。エリア別にコンセプトが異なっているので、あらかじめ頭に入れておくとよいでしょう。
<本館>
・当時、いったい何が起きたのかを知るための展示(遺品、写真 など)
・熱線爆風の影響(被爆当時に何もなく、放射能の影響が事後に現れた人々について)
・被爆者や遺族の苦しみ、悲しみ(写真、遺品、手記 など)
・生きた人々のエピソード
<東館>
・当時、どのように市街地が熱線爆風を受けたのか
・1942年のマンハッタン計画から、なぜ広島市に原爆が投下されたのか
・原爆投下後の世界の経緯
・原爆投下前後、そしてこれからの広島
このうち本館部分が今年リニューアルオープンし、その影響で来館者も増えているとのこと。どういった点が大きく変わったのか、滝川館長が詳しく教えてくれました。
「2018年の来館者は約152万人。これまでの最高は、オバマ前大統領が訪れた2016年の約173万人でした。しかし本館がリニューアルオープンした2019年は、これを上回る勢いで大勢の方々が広島平和記念資料館に来てくださっています。
リニューアルオープンした本館のコンセプトは『将来にわたって、被爆体験を次世代へ継承する』こと。そのため、以前は展示のなかに作り物もありましたが、現在はすべて実物資料のみ展示しています。やはり原爆について知ってもらうのに、本物以上はありません。
そのため、なかには目を覆いたくなるような悲惨なものも含まれているんです。見ていて具合悪くなってしまうという方もいるので、そういう場合は、無理に見ないように伝えています。展示だけでなく、温度や湿度、照明まで、すべて考え抜いた環境です」
原爆投下によって広島市では約14万人が亡くなり、市民は半数近くになったといわれています。しかしそれだけ大きな被害がありながら、時代と共にその歴史が風化しつつあることを感じていると滝川館長はいいます。
だからこそ、改めて多くの方々に広島平和記念資料館を訪れてもらい、次世代へと伝えていくために、今回のリニューアルオープンが実現したのです。それでは実際に、館内のようすを見て行きましょう。