広島県民は「ワニ」を食べる?年末年始に食べたい、おもしろ県民フード
お祝いの場で食べる「正月鯨」/長崎県
続いては、長崎で年末年始に食べる料理から。必ずしも正月に限らず、結婚式などおめでたい席でも口にすると聞きますが、長崎ではお祝いの場面でクジラ肉を食べるとご存じでしたか?
年末になると、街のスーパーマーケットの鮮魚売り場に山積みになって売られるほど、クジラは長崎では一般的な食べ物です。筆者も子どものころ九州出身の父親の実家に帰省したとき、長崎に出かけ、「湯かけ鯨」を年始に食べた記憶が残っています。
竜田揚げではなく、生々しいクジラを口にした初めての経験でした。もちろん、クジラは正月のお節料理の重箱にも、長崎では入れられます。
クジラは長崎で、どうして縁起のいい生き物として食べられるのでしょうか。
長崎に限らず、日本人はイルカやジンベイザメ、クジラなど巨大な海の生き物を、漁業の神様やえびす様と考え、信仰の対象としてきた歴史があります。
長崎も同じで、例えば平戸市にある生月島の白山神社には、クジラに座ったえびす様が祭られています。えびす様とクジラは密接な関係があると考えられており、縁起物として正月や結婚式などお祝いの場面で愛されているのですね。
長崎の新上五島町には「鯨賓館ミュージアム」がありますし、同じ町内の海童神社には鯨の骨でできた鳥居まであります。国の重要無形民俗文化財「長崎くんち」の奉納踊りでも、「鯨の潮吹き」といわれる催し物が行われます。
2019年は日本が国際捕鯨委員会(IWC)を脱退し、31年ぶりに商業捕鯨が再開された年。
クジラの食文化(鯨食)に対する価値観も、いまは世界中で揺れています。しかし長崎は弥生時代の遺跡からも捕鯨の痕跡が見つかるほど、クジラと密接に歴史を歩んできた土地です。その歴史が、正月の食文化にも表れているのですね。
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