広島県民は「ワニ」を食べる?年末年始に食べたい、おもしろ県民フード
年末年始のごちそう「ワニの刺身」/山陰地方など
続いては、衝撃的な(?)食べ物を紹介します。正確には験担ぎや縁起物とも違いますが、少し変わった年末年始のごちそう。島根県や広島県の山間部、山陰地方などで愛される「ワニ」の刺身ですね。
「ワニの刺身を年末年始に食べるの?」と驚くかもしれませんが、実はこのワニ、標準語でいえば「サメ」。山陰地方などでは秋冬にサメを食べる習慣があり、いまでも愛され続けているのですね。
地元のスーパーマーケットに行けば、「わに 生食用 ねずみ」などと書かれた切り身が販売されています。何も知らないと一体何の肉なのかドキドキしてしまいますが、「サメ 生食用 ネズミザメ」という意味になります。
この「ワニ」という呼び方、日本の神話である『古事記』にも出ていました。
「因幡の白兎(いなばのしろうさぎ)」という有名なくだりで、白ウサギが沖の島から陸地まで海を渡る際に、ワニたちをだまして、ワニの背中を走って対岸にたどりつくというエピソード。
その際の痛々しい結末はさておき、筆者が初めて古事記を興味深く読んだ際の本には、挿絵としてワニ(アリゲーターかクロコダイルか)が海に一列に並んでいて、その上を白いウサギが走っている絵が描かれていました。
そのため完全にワニの背中を踏んでいったのかと思っていましたが(なぜ山陰の海にワニが暮らしているのか、当時は何の疑問も感じませんでした)、実は山陰ではサメをワニと呼ぶ言葉が残っていると、大人になってから知ります。
しかも因幡の白兎は、ワニ(アリゲーター、クロコダイル)の背中を蹴って走った、あるいはサメの背中を飛んで渡ったという2つの説があるとあわせて知ります。
この辺りの伝説に思いをはせながら年末年始に山陰地方などでワニ(サメ)の刺身を口にしてみると、また味わいに独特の奥行きと深みが増すかもしれませんね。