日本人と中国人の違いから、文化の意外な「個性」が見えてきた
中国ではどんな調理も「大きな包丁」で
どれだけ自炊しない人であっても、1本くらいは家に「包丁」を持っていると思います。
「刺身包丁」だとか「出刃包丁」だとか専門的な包丁ではなく、恐らく「万能包丁(三徳包丁)」を持っていますよね。そこで、自宅のキッチンにある包丁を思い浮かべてもらいたいのですが、どのような形をしていますか?
新幹線の先頭車両のように切っ先がとがっていて、みね(刀身の上部)が緩やかな曲線を描き、つば・口金・ハンドル(柄)へと続くイメージではないでしょうか。
基本的に包丁は食材を切るための道具です。それ以外の細かな料理の作業、例えば食材をつぶすだとか、切った食材をざるや皿に移すだとかは、はしやすり鉢など別の道具を使うと思います。プロの料理人になると、切る食材によって包丁を使い分けていますよね。
しかし、プロの料理人でも中国では1本の包丁で全ての作業をまかなうのが当たり前なのだとか。
もともと中国の包丁は刀身が長方形に近いです。日本の万能包丁が新幹線の先頭車両のような形をしているとすれば、中国の包丁は、ロンドンの街中を走る2階建てバスといった感じでしょうか。
刀身の面積が広いので、その平たい面を使って食材をつぶす、切った食材を載せて別の場所に移すなどの作業でも使われています。
中国人の間で日本の包丁が大人気?
もちろん、細かい食材を刻む作業もできますし、肉を薄切りも可能。太い魚の骨を断ち切れる重さとタフさもあります。
要するに、中華包丁が1本あればあらゆる調理に対応できるのですね。もちろん、薄刃・厚刃・骨切用などの細かい違いはあるみたいですが、中華包丁こそ「万能包丁」と呼べるのかもしれません。
ちなみに、コロナ禍前は日本の軽くて切れる万能包丁が中国でも人気で、日本に来た中国人旅行者が喜んで買って帰るとの報道もあります。一方で、軽量化した中華包丁を中国の家庭では最近だと使っているとの話も。
どちらが実態に近いのか、何人かの中国に暮らす中国人と、中国以外に暮らしながらも中国にルーツを持つ友人・知人たちに聞いてみたところ、中華包丁派が回答には多い印象がありました。
身の回りに見える情報から軽率に一般化すれば、中華包丁が中国ではやはり主流派なのではないでしょうか。