日本人と中国人の違いから、文化の意外な「個性」が見えてきた
「中華鍋」ひとつで調理を済ませる
先ほど、中華包丁は1本でいろいろな使い道があるといいました。この使い勝手の良さを、「一器多用(いっきたよう)」と表現する言葉もあるみたいです。
初めて聞く言葉だったので、どういった意味なのか『広辞苑』(岩波書店)を調べてみると、掲載されていませんでした。中国語の辞書にも掲載されていませんが、比較的新しく日本で生まれた言葉なのでしょうか。
なんであれ、この「一器多用」的な世界観は中国人の台所にある他の道具でも見て取れます。例えば「中華鍋」です。
皆さんは、中華鍋を持っていますか?一部の調査によると、日本人の3割程度が所有しているみたいです。
筆者も大学生のころ、タレントのタモリさんがテレビでチャーハンをつくっている様子を見て、真似して買った覚えがあります。
しかし結局、チャーハンをつくる以外に使いませんでした。日本で持っている3割程度の方も、意外に似た感じかもしれませんね。
日本の料理では、何かを炒める・焼くとなったら、フライパンを一般的に使うと思います。何かを煮る・茹でるとなったら鍋を使います。
何かを揚げたいと思えば、凝った人だと天ぷら鍋を使うのではないでしょうか。何かを蒸したい場合は蒸し器や圧力鍋を使うかもしれません。
中華鍋、実は超万能!
なんであれ調理によって調理器具を変えた方がいいと感じる気持ちが根底にはきっとありますよね。少なくともフライパン・片手鍋・両手鍋・土鍋くらいは、そろえる人が日本では主流派だと示す調査もあります。
しかし、中国では全く異なるのだそう。炒めるも焼くも、煮るも揚げるも、全部中華鍋で済ませてしまうと『絵本 世界の食事 8 中国のごはん』(農文協)で明らかにされています。
そういわれると、ガラス張りの厨房をのぞき見できる中華レストランへ行くと、ほぼ中華鍋しかコンロの上で動いていない印象があります。
この春から新生活をスタートさせる人も多いはず。それほど自炊しない、調理器具はあまり買いそろえたくない場合は、フライパンも片手鍋も両手鍋も兼ねて中華鍋をひとつ買えばいいのかもしれませんね。