高温多湿なタイで主流の「プリックリー・ヒート・パウダー」は涼しくなる魔法の粉?

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2022/08/27

メントールの爽快感が全身に

image by:坂本正敬

この文章を書くにあたって筆者は、シャワーを浴び、全身に(顔も)パウダーをこすりつけて、パソコンの前に向かってみました。

筆者は北陸に暮らしているので、太平洋側の大都市ほど毎日が暑くないのですが、外は晴れてセミが鳴いています。一応、夏日です。時刻は正午前。北向きの書斎で冷房を切り、窓を全開にしています。部屋の中をきょうは風が通っています。

この環境だからか、「プリックリー・ヒート・パウダー」まで全身にすり込んだきょうは、暑さを全く感じません。むしろ、メントールの爽快感があります。なにより肌がさらさらして、悪くない居心地です。

ただ、個人的には匂いが最初は気になりました。なにしろ、タイから空輸された缶詰のパウダーは丁寧に梱包されているのに、その状態でもハッカあめのような香りをわずかに漂わせていたくらいです。

しかし、パウダーを体にすり込んで1時間くらいが経過したころ(ちょうどこの文章を書いているころ)、自分の鼻が慣れてしまったのか、匂いがほとんどなくなった気がします。

いずれにせよ、ちょっと日本ではなかなか漂ってこない、東南アジアっぽい香りだと思いました。

image by:坂本正敬

ただし、成分表をチェックしていると、気になる情報も出てきました。

  • Talc(タルク)
  • Kaolin(カオリン)
  • Camphor(樟脳、カンフル)
  • Perfume(香料)
  • Menthol(メントール)
  • Triclocarban(トリクロカルバン)

「Talc」とは、日本語で滑石(かっせき)と呼び、日本での「化粧品成分表示名」「医薬部外品表示名」では「タルク」と表示されます。

柔らかい鉱物のひとつで、なめらかな使用感と光たくが特長です。メイクアップ製品、ボディケア製品、日焼け止め製品に日本でも使用されているそう。


「Kaolin」とは、「化粧品成分表示名」「医薬部外品表示名」で「カオリン」と日本では表示されます。研磨・スクラブ剤、吸着剤、皮膚保護剤などを目的として化粧品・医薬品に配合されるようです。

「Camphor」は、日本語で樟脳(しょうのう)です。辞書で「樟脳」を調べると、

<防虫剤・防臭剤・医薬などに使用>(岩波書店『広辞苑』より引用)

とあり、「カンフル」とも書かれています。

カンフルとは、日本での「化粧品成分表示名」「医薬部外品表示名」で前者は「カンフル」、後者は「dl-カンフル」「d-カンフル」と表示されます。クスノキに多量に含まれているらしく、

<医薬品分野において消炎薬として湿布剤や塗り薬などに、また止痒作用があることからかゆみ止めなどに使用されます>(化粧品成分オンラインより引用)

とあります。Perfume(香料)、Menthol(メントール)は説明が不要だと思います。問題は、最後の「Triclocarban(トリクロカルバン)」。

調べると、抗菌せっけんやボディーソープなどに、殺菌剤・消臭剤・防腐剤として使用される成分みたいです。

しかし、2016年9月2日に米国食品医薬品局(FDA)が、トリクロカルバン(殺菌剤)を含む抗菌せっけんやボディーソープなどを1年以内に販売禁止にすると発表しています。その理由は、

<manufacturers did not demonstrate that the ingredients are both safe for long-term daily use and more effective than plain soap and water in preventing illness and the spread of certain infections>(FDAのホームページより引用)

と書かれています。

大まかに訳すと、「長期間に渡って使っても安全な成分だと業者によって示されず、使ったところで病気を予防したり、何かの感染拡大を食い止めたりする効果も示されなかった」のですね。

この措置を踏まえ、日本化粧品工業連合会、および日本石鹸洗剤工業会も、トリクロカルバンを含有する薬用せっけんについて、トリクロカルバンを含有しない製品への切り替えを会員会社に要請しています。

「プリックリー・ヒート・パウダー」は薬用せっけんではありませんが、現地流の使い方をするとなると、首にも顔にも使用します。薬用せっけんと違って洗い流さない上に、粘膜周辺にも使用すると考えれば、ちょっと気になるかもしれません。

ただし一方で、厚生労働省の議事録には以下のような意見も掲載されています。

<五十嵐座長:(前略)国内で今回の対象成分を含む薬用石けんによる健康被害の報告もない、米国において当該措置の適用日を1年後と設定していることを踏まえますと、現在使用している薬用石けんに対する消費者が不安に思う必要はない。これまでに健康被害も報告されていないようですので、そのように考えてよろしいでしょうか。

遠藤委員:はい、結構だと思います。>(2016年11月28日厚生労働省の議事録より引用)

今回は、あくまでもタイの人は爽快感のあるパウダーをシャワー後に使って暑さをしのいでいるよとの話。「プリックリー・ヒート・パウダー」を使いましょうという趣旨の記事ではありません。

同じように日本でも、安全が確認される市販商品の中から涼感アイテム(ローション、ジェルなど)を探し、シャワー後に使って、夏を乗り切るという方法があってもいいのかもしれませんね。

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翻訳家・ライター・編集者。成城大学文芸学部芸術学科卒。富山在住。主な訳書『クールジャパン一般常識』、新著(共著)『いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日』。北陸のWebメディア『HOKUROKU』創刊編集長。WebsiteTwitter 

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