心も癒すパワースポット。奈良の世界遺産「薬師寺」で健康長寿を祈願

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2024/01/21

奈良にある世界遺産の1つ「薬師寺(やくしじ)」。飛鳥時代の680年、天武天皇によって藤原京で創建されました。そして710年の平城遷都に伴い、718年に現在の場所に移設。建物などが造営されて現在の姿になりました。

image by:Shutterstock.com

薬師寺には「病気平癒」「健康祈願」のご利益が賜れる、薬師三尊像が祀られています。そのため、身体の健康などに関するパワースポットとしても知られ、そのご利益にあやかるために多くの人々が訪れるそうです。

今回は、”日本でもっとも美しい塔”がある薬師寺の由来やご利益、見どころなどを紹介します。

薬師寺は天武天皇が皇后の「病気平癒」を祈願するために建立

天武天皇が薬師寺を発願した理由は、自身の皇后(のちの持統天皇)の病気平癒を祈願したことと伝わります。

697年には持統天皇による本尊開眼、さらに次の天皇である持統天皇の孫、文武天皇の代に「堂宇(※注1)」が完成しました。

当時、薬師寺は日本で初めて、中央に本尊を祀る金堂と、東西に二基の塔を配する伽藍配置を採用しました。このような伽藍は「薬師寺式伽藍配置」と呼ばれ、国内随一の壮美さだったとのこと。

そして、創建当時から現存する唯一の建物が、国宝であり、日本でもっとも美しい塔として知られる「東塔(とうとう)」です。

※注釈1:「堂宇(どうう)」=堂の建物。殿堂。
薬師寺で創建当時からある「東塔」。よく見ると三重塔である。image by:シカマアキ

各層に裳階(※注2)を付けていて六重に見えるものの、実は三重塔。薬師寺の西にある大池から、東大寺や春日山を背景とした眺めは、奈良を代表する風景の1つとして、よく知られています。

※注釈2:「裳階(もこし)」=軒下壁面に付いたひさし状構造物。
薬師寺の西にある大池から望む2つの塔や金堂など。後ろは「春日山」。image by:photoAC

一方、「西塔(さいとう)」は1584年の兵火で焼失後、1981年に創建当時の姿で再建されました。西塔も当時の資料などから忠実に再現されたのだそう。


「西塔」が再建されたのは1981年。2つの三重塔が並び立つ姿こそ薬師寺らしい光景。image by:シカマアキ

寺院史料が記された『薬師寺縁起』によると、創建当時の東塔と西塔にはお釈迦様(ブッダ)の生涯をあらわす「釈迦八相像」が祀られていたとのことです。

金堂に安置されている「薬師三尊像」は心身を守る仏さま

薬師寺の大伽藍、その中心にあるのが「金堂(こんどう)」です。1528年焼失後、1600年に仮金堂が建てられ、1971年から5年がかりで創建時の姿がよみがえりました。

「薬師寺金堂」に薬師三尊像が安置されている。image by:シカマアキ

金堂には、中央に「薬師如来」、向かって右に「日光菩薩」、左に「月光菩薩」が安置されています。これらを合わせて「薬師三尊」といいます。

薬師如来は、人々の身と心の健康を守る仏さま。現代風に例えると、薬師如来がお医者さま、日光菩薩と月光菩薩が日中と夜間の看護師にあたるそうです。

金堂で手に入る「身体健全」「長寿健康」のお守り image by:シカマアキ

元はといえば薬師寺は、天武天皇が皇后鵜野讃良皇女(うののさららのひめみこ)、のちの持統天皇の病気平癒を願って創建されたお寺。

薬師寺そして薬師三尊にあやかりたいと、現代も身体の健康や長寿などを願う人々の参拝が続いています。

「東院堂」と「聖観世音菩薩立像」はいずれも国宝。そのご利益とは…

薬師寺にはもう1つ、国宝があります。日本最古の禅堂として知られる「東院堂」です。

東院堂は、奈良時代に皇親であり政治家の長屋王(ながやおう/ながやのおおきみ)の妻、吉備内親王(きびないしんのう)により、母の元明天皇の冥福を祈って発願建立され、鎌倉時代の1285年に再建されました。

薬師寺 白鳳伽藍の東側に建つ「東院堂」。鎌倉時代の建物。image by:photoAC

東院堂に安置されている国宝「聖観世音(しょうかんぜおん)菩薩立像」は、人の苦しみを聞いてただちに救ってくれるご利益があるとされます。

立像をよくみると、肩辺りまである垂髪に、透き通るような衣服、花びらのごとく繊細かつ美しい指の動きなど、とても美しい仏像です。若さの中にただよう気品や端正さは「祈りが昇華してゆく崇高なお姿」と言われます。


誰でも体験できる「写経」で自分の心を見つめなおす機会に

薬師寺は「写経」の寺としても、よく知られています。天武天皇は、写経の功徳による国家安泰や万人豊楽を願い、大蔵経の写経をおこなったと伝わっています。

薬師寺といえばお写経道場。古くは天武天皇が写経を納めたことに由来する。image by:シカマアキ

写経は、1文字1文字を丁寧に筆と墨で和紙に書き写すことで、心を落ち着かせる仏教における修行のひとつ。

自分が抱える悩み、健康、病気など思うことを改めて書き表すことで、自らの心の在り方を見つめる機会になるとのことです。

薬師寺の「お写経道場」には写経に必要な道具一式がそろう。予約不要で体験できる。image by:シカマアキ

薬師寺では、1967年からこれまで55年あまりで、約880万巻の写経が納められました。敷地内の「お写経道場」では、宗教・宗派を問わず、誰でも気軽に写経体験ができます。

  • お写経道場
  • 0742-33-6001
  • ご納経料:般若心経1巻/2,000円、薬師経1巻/4,000円、唯識三十頌1巻/5,000円
  • 開催日:年中無休
  • 時間:8:30〜17:00
  • 公式サイト
  • 事前予約不要(7名以上で訪れる際には、事前に連絡を入れておくとスムーズです)。用具不要。

薬師寺に足しげく通う人々が絶えないのは、現代だからこその理由があった

薬師寺は「心を訓練する寺」でもあるとのこと。「自分の心は自分でしか救えない」と聞くと、どこか納得できる人もいるのではないでしょうか。

写経は、自分や親族らの病気平癒や健康祈願、家内安全や学業祈願などをはじめ、お盆やお彼岸でのご先祖供養などで体験しに来る人が多いとのこと。

ほかに「自分と静かに向き合う時間が持ちたい」「平常心や集中力を養いたい」との目的で写経をする人もいるそうです。

自ら心を鍛えたり、癒しや穏やかな気持ちになったりするためにも、忙しない現代こそ、写経に集中して取り組む体験は貴重な機会になるでしょう。

薬師寺の東塔(左)と金堂(右)、奥に南大門(中央)も見える image by:シカマアキ

薬師寺は、近鉄西ノ京駅からすぐの場所にあります。

薬師寺がある場所は古くから「西ノ京」と呼ばれます。平城京の朱雀門から南にのびる朱雀大路の西側(右京)をさし、薬師寺や近くにある唐招提寺などが当時の栄華をしのばせる姿で残っています。

1998年にユネスコ世界遺産に登録された「古都奈良の文化財」は、2023年に登録25周年を迎えました。これに合わせて制定された「新・南都八景(※注3)」において、薬師寺から「南大門付近からの白鳳伽藍全景」が選ばれました。

薬師寺と東塔(右)と西塔が並び立つ光景は「新・南都八景」で「南大門付近からの白鳳伽藍全景」として選ばれた image by:シカマアキ

2つの三重塔が並び立つ様子を写真に収められるのは南大門付近からだけなので、ぜひ撮影してみてください。

※注釈3:「南都八景(なんと はっけい)」とは、奈良市の東大寺・興福寺周辺にみられる優れた風景から「八景」の様式にならい、8つを選んだ風景評価を指す。
  • 薬師寺
  • 奈良県奈良市西ノ京町457
  • 0742-33-6001
  • 近鉄西ノ京駅
  • 【国宝東塔落慶記念 東塔・西塔特別公開(2024年1月15日まで)】(通常拝観券)大人1,100円/中高生700円/小学生300円(共通拝観券)大人1,600円/中高生1,200円/小学生300円【2024年1月16日~2月29日】(通常拝観券)大人800円/中高生500円/小学生200円
  • 8:30~17:00(受付は16:30まで)
  • ホームページ
  • ※2024年3月1日より拝観時間と拝観料が改定されます。詳しくは薬師寺HPでご確認ください。
  • image by:Shutterstock.com
  • ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。
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ジャーナリスト・フォトグラファー。飛行機・空港、旅行、ホテル、グルメなどをメインに、国内外で取材、撮影などを行う。雑誌やWEB向けの記事、写真や旅行などのセミナー講師も務める。元全国紙記者。大阪在住。

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