給料が3倍に。人口160名の小さな島が成し遂げた、奇跡の「島おこし」
タコのおかげで、若手漁師の収入は約 3 倍に!
この状況を打破するためには、島の長所を伸ばすことが必要だ。魚が沢山とれる島だからこそできることは何だろうか。
そんな思いで漁業を土台とした島おこしに奔走している人がいる。魚島漁業協同組合専務の村上要二郎さんだ。
「魚島の人口は現在約 160 人ですが、役場関係者、小中学校関係者、住基登録のみの方を除けば地元民は 100 名足らずです。10 年後、この島はどうなっているでしょうか。きっと、子供は0、学校関係者も0、島を離れたり、他界する人は 30 名以上、また役場関係者も減り、確実に人口は 50 名を割り込むような状態です。学校がなくなることにより、地域のコミュニティは完全に失われ、静かに消滅への道を進むものと思われます」
と村上さん。
魚島が属する自治体、愛媛県越智郡上島町の町会議員も務める村上さんは、漁協職員という立場で魚島に暮らす。
「島の現状を目の当たりにして、どうにかこの島の消滅を防ぎたいと考えて漁協に飛び込みました。島の産業は漁業のみ。魚価は下がるし、漁獲量も取れない。やる気もお金もないこの島でどうすれば島の消滅を防げるのか?ということを考えたんですよね。その結論は『移住者の確保』でした。方法はいろいろあるとは思いますが、田舎は生産者があってのものだと私は考えています。そこで迷いもなく、漁師の所得、やる気のレベルアップを前提に取り組みを始めました」
魚島にやって来た村上さんがまず取り組んだのは、漁師の所得を上げるための販路を開拓することだった。約 1 年かけて営業した結果、各地に「くら寿司」を展開する株式会社くらコーポレーションとの年間契約が決まった。
この契約には鯛やスズキ、ボラ、アカエイなど定置網で獲れるすべての魚種を販売する「一船買い」というシステムを採用し、現在 3 人の漁師が取り組んでいる。
村上さんは「仲買、市場を通さず直接販売を行い、中間マージンを漁師に還元しました。その結果、若手漁師の収入は約 3 倍になりました」と話す。仕事の収入が上がり、比例してやりがいも生まれる。理想的な循環だ。
また、漁業の活性化とともに、漁協女性部や愛媛県の料理研究家とともに魚島産の魚介類を用いた製品開発も魚島を活性させる 1 つの柱になりそうだ。島の漁協で、「真蛸としめじのアヒージョ」を求めた。
これは経産省の“世界にまだ知られていない、日本が誇るべきすぐれた地方産品”を発掘し、海外に伝えていくプロジェクト「The Wonder 500™」に選ばれた 1 品。やわらかなタコの旨味と香ばしいニンニクが食欲をそそる。
魚島産の魚介類を使った製品には「真蛸柔らか煮」「炊き込みご飯の素 蛸めし」「魚島海苔」などもある。最近、新たに「クラムチャウダー」「ブイヤベース」も開発され、東京では高級スーパーなどで販売される予定だ。
今年に入り、愛媛県済美高校食物科学コースの生徒とともに魚島のタコを使った製品開発も行われた。
「魚島タコロッケとして、済美高校生が松山市のお城下マルシェでテスト販売しました。次回は 11 月 18 日に開催される愛媛産業祭りへ出品する予定です。また、済美高校の真横にコンビニがあるので、生徒とコラボして作ったコロッケをコンビニで商品化できるよう営業したいと考えています。コロッケの中身は魚島産タコと梅干し、魚島海苔(味付け)とチーズ入りの 2 種です」
実は今、村上さんのもとに嬉しい知らせが舞い込んでいる。
「現在、2 名が魚島への移住を検討しています。話がまとまるかは別として、今までにはなかった向こうからのアプローチですから、とっても楽しみにしています。私の今後の目標は魚島で 2 世帯の若手漁師が生まれ、家族と子供で暮らしてもらうこと。島の消滅を防ぐことを目標としています」
瀬戸内海の離島、魚島は現状を打破するために舵を切った。船首は漁業でにぎわう島の未来を向いている。
- image by: 上島町
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