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オムレツでまさかの町おこし。なぜ和歌山「はしもとオムレツ」は成功できたか

吉村 智樹
吉村 智樹
2018/04/04

「はしもとオムレツ」は一通のメールから生まれた

向かって左:橋本市役所「経済推進部」主幹の梅本利樹さん 右:同主査の井上愛子さん

まず、知りたかったのは「はしもとオムレツ」というものが誕生したいきさつです。

梅本「いまから3年前、市長あてに市民の方からメールで『食を使ったブランドづくりをしたらいいんじゃないか』という提案がありました。橋本市はこれまで柿、ぶどう、ほうれんそう、恋野(こいの)マッシュルーム、太さが自慢のごぼう『はたごんぼ』など農産物で名を馳せることが多かったんです。しかし名物料理となると、これはなかった。そこでさまざまな調理アレンジが考えられるオムレツに着目し、2年前に『和歌山はしもとオムレツ推進協議会』が発足しました」

なんと、「はしもとオムレツ」は、市民からの一通のメールによって誕生したものだったのです。この一通のメールに共鳴した官と民の事業主が集まって旗揚げしたというから、「町おこしというものは本当に小さな一歩から始まるのだな」と改めて感じました。

しかし、さらなる疑問が。農作物が豊富な橋本市で、なぜ町おこしに「たまご」を使おうと考えたのでしょう。

梅本「実は橋本市は鶏卵も重要な地場産品なんです。めんどりの成鳥はおよそ14万2000羽。鶏卵の生産量は年間約4600万個と推定され、その数は和歌山県内の約6割に及びます。金剛山南側斜面の標高が高い場所に大規模な養鶏場がいくつもあり、きれいな水と空気と清潔な環境のなかで、平飼いに近い状態で飼育されています。健康なので餌に抗生物質を使っておらず、そのため名前を聞けば誰もが知っている大手の洋菓子メーカーも橋本市のたまごを原料にしているんです」

橋本市は和歌山県内の鶏卵生産量の約6割を占める

井上「橋本産のたまごは栄養価が高く、黄身がしっかり色濃く鮮やかで、うま味とコクがあるんです。私も料理をしますが、橋本市のたまごとそうではないたまごでは、同じおかずでも味の深みがまるで違うんですよ」

梅本「ただ、地元にそんな美味で素晴らしいたまごがあるのに、アピールするのが後手にまわっていた感は正直ありましたね。たまごって生活のなかでつねに使っているから」

なるほど。大自然のなかで産み落とされ、和歌山県内で圧倒的なシェアを誇る「たまご」は、地元にとってその存在があまりにも身近だったがために、観光の一環になると注視されたのはごく最近だったというわけなのですね。

そうして「はしもとオムレツ」が誕生。現在28店舗が加盟しています。定義は「必ず橋本市産の鶏卵を使用すること」「他の橋本市産の素材を併せて使うこと」の2点。この2点を厳守すれば、料理ジャンルは自由。そのため洋食店のみならず、イタリアン、中華、和食、居酒屋、割烹、ブーランジュリー、果ては健康ランドに至るまで幅広い環境で「はしもとオムレツ」がいただけるのです。


柿のおかっぱヘアに伝統工芸品「紀州へら竿」を背負った妖精「はしぼう」。大好物はもちろんオムレツ

梅本「ほとんどの加盟店が、プロジェクトに賛同して『はしもとオムレツ』として新たにメニューを考案してくれました。だから橋本市のオムレツは、ここに来ないと味わえないものばかりなんです」

考案された「はしもとオムレツ」は、マッシュルームソースをかけたり、和風のおだしにひたしたり、中華あんかけにしたり、オムレツそのものをフライにしたりと、店主が頭をひねったニューウエーブ。見た目や焼き加減はお店によってまるで異なります。2016年11月~2017年10月まで開催されたスタンプラリーでは、なんと100人近いお客さんが全店舗のメニューを実食したというから驚き。制覇しても飽きないほど、はしもとオムレツはバリエーションに富んでいるのです。

「はしもとオムレツ」認定店に配布されるたまご型オブジェ
割烹「勝一(かついち)」の「うまきオムレツ」(1000円 税込)。和食の店も新しいオムレツを開発

吉村 智樹

京都在住の放送作家兼フリーライター。街歩きと路上観察をライフワークとし、街で撮ったヘンな看板などを集めた関西版VOW三部作(宝島社)を上梓。新刊は『恐怖電視台』(竹書房)『ジワジワ来る関西』(扶桑社)。テレビは『LIFE夢のカタチ』(朝日放送)『京都浪漫』(KB京都/BS11)『おとなの秘密基地』(テレビ愛知)に参加。まぐまぐにて「まぬけもの中毒」というメールマガジンをほぼ日刊で発行している(購読無料)。

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