水着で混浴。海外の温泉文化は日本とこんなに違う
ヨーロッパで温泉は医療や療養目的がメイン?
日本と世界で異なる温泉の違いは、男女で水着を着て泳ぐという点だけではありません。温泉に求める機能や情緒も大きく異なります。
日本の場合は源泉周辺を温泉街として高度に観光地化させ、そこに情緒を伴った宿泊拠点を築き上げています。
数多くの文人が温泉地を愛したように、日本人は温泉地と聞くと、それだけで何か陰影を帯びた風韻や詩心を感じてしまいますよね。川端康成『温泉宿』など、温泉を舞台にした作品も数多く存在します。
しかし世界の温泉地は、若干風情が異なります。日本以外の場合はレジャーあるいは療養地という側面を、より前面に打ち出しているのです。
先ほど、ロシアでの温泉浴はピョートル一世がヨーロッパを旅して周り、ロシアに持ち帰ったところから歴史が始まると紹介しました。
世界の温泉分布図を見ても、日本ほどの数ではないもののヨーロッパにも源泉が十分にあります。
特にドイツ、オーストリア、フランス、イタリア、イギリスなど各国では、治療用保養地を作る文化も脈々と育まれてきました。
例えばドイツやオーストリア、フランス、東欧諸国では、健康保険が温泉医療に適用されるのだとか。
<保養に行くのはどんな人種だろうか? まずはいうまでもなく本物の病人たち>
<大昔には当時はおよそ考えられるあらゆる病気に対して効くと見込まれていた>
(どちらも『世界温泉文化史』(国文社)より引用)
とあるように、温泉入浴は医療行為というイメージが、ヨーロッパでは根強いと聞きます。
実際にヨーロッパの有名な温泉地の1つ、ベルギーのスパに取材旅行で立ち寄った経験があります。
その際に見た、同地の有名な温泉「Les Thermes de Spa」は昔ながらの保養施設をより洗練させ、モダンなリゾートホテルにある温水プールといった感じの雰囲気を作って、人々を癒やしていました。
温泉は総じてぬるいです。歯を食いしばって熱いお湯に体を沈め、身動きせずにじっと窓の外の風月を愛でる、どこか内省的な行為と言った感じではまったくありません。
日本人が思わず俳句を詠みたくなるような、余剰余韻のある世界観が、海外の温泉地に必ずしもあるわけでもないのです。