マスター、いつもの。地元民も外国人も通いつめる「和酒BAR縁がわ」

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2019/10/30

海外では「SAKEパーティー」も開催

image by:Masayoshi Sakamoto(坂本正敬)

同店のこだわりは、お酒だけではありません。酒器についても同様のこだわりを持っていて、地元の山中漆器を中心に、酒器の形状と質感で日本酒の酒質を最大限に引き出す取り組みをしているのだとか。

こうした取り組みが次第に評価され始め、2年ほど前からメディアに露出するとともに、山中の人気店となっていきます。

image by:Masayoshi Sakamoto(坂本正敬)

地元客はもちろんですが、温泉街にあるバーのため、宿泊客がまちを散策した流れで来てくれるといいます。そのなかには、アメリカ人を中心にカナダ、オーストラリア、 フランスなどから来る外国人もいます。こうした外国人客から「感動した」と母国に招かれ、現地の飲食店やご自宅で「SAKEパ ーティー」を開催してきた実績もあるのだとか

下木さんはそうした機会を通じて、海外の人が好む香味を学びます。日本に戻ってきてからも、「リコメンド、プリーズ(おすすめをお願いします)」とオーダーする外国人への日本酒の提供表現に、おおいに活かしているのだとか。 

兼好法師の名文が座右の銘

店内には喫煙コーナーもあるimage by Masayoshi Sakamoto(坂本正敬)

どうしてここまで、下木さんは徹底して日本酒に情熱を注ぐのでしょうか。この素朴すぎる質問をぶつけると、下木さんは丁寧に考えをめぐらせます。その姿には、何事もさぼらず徹底して考える、きまじめさに似た何かを感じました。

聞けば、20代の前半に当時付き合っていた恋人が命を落としかけた経験があるそう。そのときから「人はいつ死ぬか分からない」と痛感し、毎日を全力で生きるようになったのだとか。その延長に「日々是決戦」といった覚悟が感じられる、今の店舗経営があると教えてくれます。

お店沿いの路地裏image by:Masayoshi Sakamoto(坂本正敬)

話が座右の銘へと移ると、兼好法師の『徒然草』にある名文が出てきました。

「月の夜 雪の朝 花のもとにても 心のどかに物語して杯出したる よろずの興をそふるわざなり」(※一部を常用漢字・平仮名に書き直しています)

「そふる」とは古語で、他動詞の場合「付け加える/付け足す」などの意味。日本酒はよろずの興を、日々の暮らしに添えてくれるという意味でしょうか。

同じく石川県の山中温泉に宿泊した旅先の夜に、もうひとつ興を添えたいと思ったら、「和酒 BAR 縁がわ」を訪れてみてください。物語をしながら下木さんの差し出す杯で飲む地酒は、格別の味わいがあるですよ。


  • 和酒 BAR 縁がわ
  • 加賀市山中温泉南町ロ-82
  • 0761-71-0059
  • 定休日:木曜日
  • 14:00~24:00
  • 公式facebookページ
  • 客席:9席(カウンター5席・個室4席)
  • image by:Masayoshi Sakamoto(坂本正敬)
  • ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。
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翻訳家・ライター・編集者。成城大学文芸学部芸術学科卒。富山在住。主な訳書『クールジャパン一般常識』、新著(共著)『いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日』。北陸のWebメディア『HOKUROKU』創刊編集長。WebsiteTwitter 

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