琵琶湖に浮かぶ神秘の島…神様が住む日本屈指のパワースポット「竹生島」
秀吉時代の大坂城の遺構と伝わる!国宝「宝厳寺唐門」
石段を下り歩を進めると、「宝厳寺唐門」の唐破風の檜皮屋根が見え始めます。これは秀吉が建てた“幻の大坂城の遺構”として注目されている国宝です。
醍醐寺座主三宝院義演による日記『義演准后日記』や豊国廟社僧の梵舜の『舜旧記』 には、大坂城の極楽橋が豊国神社に寄進された旨の記述があります。
また、2006年、オーストリアの世界遺産・エッゲンベルク城で確認された『豊臣期大坂図屏風』でも極楽橋の正面の姿が竹生島・宝厳寺にある唐破風(からはふ)様式の唐門と酷似することが確認されています。この極楽橋とは 1596(慶長元)年に秀吉が架けた、大坂城北の丸と二の丸を繋ぐ橋のこと。
唐門・観音堂・舟廊下は、6カ年にわたる修理保存事業を終え、2020年の春に美しくよみがえりました。ここでは豪華絢爛といわれた桃山様式の「唐門」の代表的な遺構が当時の姿で見られるのです。
桧皮葺、建物全体を総黒漆塗りとした上に金メッキの飾金具が散りばめられ、木鼻の獅子、虹梁中央の蟇股(かえるまた)の周囲には鳳凰や松・兎・牡丹の彫刻が見られます。
二枚の大きな開き戸の桟唐戸(さんからど)や壁には牡丹唐草の彫刻を極彩色塗りなど、その一つ一つが圧巻です。
唐門の建築は 1596年、その当時は豊臣秀吉が生存しているので、秀吉がこの門を通り抜けた際に目にしていた光景と同じなのかも?と思えば歴史的なロマンを感じずにはいられません。
秀吉死後、京都の豊国廟(秀吉の墓所)に移築され、現在の場所(竹生島)に移築されたものと考えられています。
重要文化財「舟廊下」
そして、「千手千眼観世音菩薩(せんじゅせんげんかんぜおんぼさつ)」が安置されている観音堂から都久夫須麻神社をつなぐようにして建てられているのが、全長30mの「舟廊下」です。
朝鮮出兵のおりに豊臣秀吉のご座船として作られた日本丸の船櫓を利用して建てられ、国の重要文化財に指定されています。この舟廊下を歩き終えたら、外観も見ておきたいところ。傾斜地に建てられた舞台造りも必見です。
- 竹生島宝厳寺
- 滋賀県長浜市早崎町1664
- 0749-63-4410
- JR長浜駅より徒歩10分→長浜港/JR近江今津駅より徒歩5分→今津港
- 宝物殿拝観料:大人300円/小人250円
- 拝観/納経時間:9:30~16:30(観光船就航時間に基づく)
- ホームページ
国宝「都久夫須麻神社」
「都久夫須麻神社(つくぶすまじんじゃ/竹生島神社)」の本殿は、豊臣秀頼の寄進で、片桐且元を普請奉行として伏見桃山城の勅使殿を移築したもの。こちらも国宝です。
本殿内部は桃山時代を代表する優雅できらびやかな装飾が施され、現在拝観はできませんが、天井画は狩野永徳光信の作と伝わっています。
この竹生島の誕生は「山の背比べ」の伝承でも知られています。それは多多美比古命(伊吹山の神)と浅井姫命(浅井岳の神/現在の金糞岳)と高さを競った話。
そして、背比べに負けた多多美比古命は怒りから浅井姫命の首を切り落とし、その落ちた首が「竹生島」だということです。なんともスケールの大きな伝承ですが、この都久夫須麻神社には浅井姫命も祀られています。
都久夫須麻神社の御祭神は「市杵島比売命(いちきしまひめのみこと)」・「宇賀福神(うがふくじん)」・「浅井比売命(あざいひめのみこと)」・「龍神(りゅうじん)」の四神。
その中で「龍神様」が鎮座している八大竜神拝所は、竹生島の中でも絶景スポットとしても知られ「かわらけ投げ」が有名です。
ここに来たらぜひ挑戦したい「かわらけ」と呼ばれる素焼きの土器に願いを書き、湖面に突き出た宮崎鳥居へと投げ、鳥居の間をくぐれば、願い事が成就するというもの。願掛けの一種です。
諸説ありますが、「かわらけ投げ」の起源は戦国時代なのだそう。武将が必勝を祈願して杯を地面に投げつけて出陣したことに始まり、江戸時代には庶民の娯楽に、そして祭礼や祝事の際に行われるようになったそうです。
やり方は簡単で本殿に参拝したら、2 枚セットになった「かわらけ」を購入して 1 枚目に自分の名前、2 枚目に願い事を記入。そして鳥居に向かってかわらけを投げるだけ。
ただ、鳥居の間をくぐらせるのはそう簡単にはいきません。力任せに投げると失敗しやすいので、願い事を頭に浮かべ、力を抜いてやってみるのが良いのだとか。
平経正が琵琶を奏した場所は、現在の都久夫須麻神社拝殿だと伝えられています。まさに、この八大竜神拝所のある場所に白龍が現れたのかも…。
- 都久夫須麻神社(竹生島神社)
- 滋賀県長浜市早崎町1665
- 0479-72-2073
- JR長浜駅より徒歩10分→長浜港/JR近江今津駅より徒歩5分→今津港
- ホームページ
竹生島を後にして…
帰りの観光船から遠ざかる島を見つめていると、空の色が茜色に変わりだしました。昼ごろに島に渡ったはずが、ほぼ一日この小さな島で過ごしていたことになります。
古くより神様が住む島と伝わる「竹生島」は、少し歩けば国宝や重要文化財の宝庫。まさか秀吉時代の大坂城の遺構まで残っていたのは驚きしかありません。大阪でも“秀吉時代の大坂城に関する遺構”は石垣しか残っていないのに…。
しかも島中の至る場所に縁起の良いパワースポットだらけ。急ぎ足でまわれば1時間ほどですべて見て回ることも可能ですが、ゆっくりと時間を過ごすのがおすすめ。
ただし、竹生島クルーズは往復の船の時間が決まっているので滞在時間を長く取る場合は、当日窓口で尋ねてください。
【琵琶湖汽船】
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