マクドナルドが米国内で格安「5ドルバーガーセット」を販売…LA在住日本人が実食レポ

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2024/07/13

2024年6月25日、『マクドナルド』が全米中の店舗で夏限定のメニュー「5ドル・ミール」の販売を開始しました。サンドイッチにマックチキンかマックダブルを選び、フライドポテト(小)とチキン・マックナゲット4個、そして飲み物がついたセットを、たったの5ドル(税抜)で買い求めることができます。

>>マクドナルド公式ウェブサイトの発表

歴史的な円安が進行中の昨今、2024年7月11日現在の為替ルートは約161円に到達。つまり5ドルとは約800円にもなります。

そう聞くと、さほど安いとは思えないかもしれませんが、あらゆるモノの価格が高騰しているアメリカ国内ではかなりのお得感があります。多くのメディアがこのマクドナルド新メニュー発売をニュースで報じていました。

昨年10月に私が書いた上の記事では、ビッグマック・セットの値段が12.60ドルでした。今回の5ドルというセット価格はそれほど思い切ったものなのです。

「5ドル・ミール」を食べてみると……

カリフォルニア州アーバイン市内のマクドナルド店舗 image by:角谷剛

早速、近所のマクドナルドに行って、「5ドル・ミール」を頼んでみました。全米で販売開始された翌日のことです。さぞかし、この新メニューを求める人が殺到し、カウンターの前には長蛇の列が並んでいる。そんな状況を覚悟していたのですが、店の様子は普段とあまり変わらないようでした。

image by:Tada Images/Shutterstock.com

最近、あちこちのファストフード店で増えたセルフ注文キオスクがここにもありました。パネルで目的のセットを注文して、カウンター前で自分の番号が呼ばれるのを待ちます。

image by:QualityHD/Shutterstock.com

システムは省略化されていても、店員の動きは日本ほどにはキビキビとしていません。今回も注文してから受け取るまでには5分くらいはかかったかもしれません。もっとも、これくらいならアメリカでは十分に“ファストフード”と言えます。

「5ドル・ミール」。サンドイッチはマックダブル image by:角谷剛

味については特筆するべきことはありません。フツーのマクドナルドです。可もなく不可もなく、と言えばよいでしょうか。


ところで、私は日本人としても小柄なくせに、アメリカ人としても大食いの部類に入ります。このセットを残さず食べても満腹感はあまりないなと感じてしまうのですが、大抵の人にとってはランチに十分なボリュームだと思います。多すぎると感じる人だっているかもしれません。

いずれにせよ、1回の食事をマクドナルドのセットメニューで済ませることを、私はとくに贅沢だとも、あるいは悲惨だとも思いません。フツーの「早い、安い」ヒルメシです。

image by:Allison H. Smith/Shutterstock.com

問題は、最近のアメリカでは、そのフツーのヒルメシにかかる1人前の費用が10ドル(約1,600円)を越えてしまうことが珍しくなくなっているということです。だからこそ、この「5ドル・ミール」には大きな意味があります。

ファストフードの安売り戦争が勃発?

カリフォルニア州アーバイン市内のタコベル店舗 image by:角谷剛

マクドナルドと競合する他のファストフード・チェーンも負けてはいません。バーガーキング、ウェンディーズ、スターバックスなどが次々と価格を思い切って低めに設定した新メニューを発表しています。

そのひとつ、『タコベル』が6月27日に販売開始したセットメニューの名称は「Luxe Cravings Box」。贅沢な欲求のボックス、と訳すべきでしょうか。その名の通り、価格はマクドナルドよりやや高く、7ドル(約1,120円)に設定されています。

タコベルの日本語サイトを見ると、日本国内にはまだ11店舗しかないそうです(2024年7月11日現在)が、アメリカでは最大手ファストフード・チェーンのひとつに数えられます。ちなみに本社は私が住むカリフォルニア州アーバインにあります。

Luxe Cravings Boxの中身。飲み物はアイスティー image by:角谷剛

タコベル公式ウェブサイトにおける発表によると、Luxe Cravings Boxのセット価格は、商品を個別に注文したときと比較して55%もお得なのだそうです。

実際に食べてみましたが、タコス、ブリトー、ナチョスといった、「アメリカ風」メキシコ料理には欠かせないと思われるものはすべてそろっています。それに飲み物がついて7ドルは安い。そう思うアメリカ人はけっして少なくないだろうと思います。私も満足しました。

ファストフード店に消費者は戻ってくるか

In-N-Out Burgerの人気メニュー「ダブルダブル・コンボ」。現在ロサンゼルス市内での価格は11.44ドル(約1,830円) image by:角谷剛

このようにアメリカの大手ファストフード・チェーンが続々と低価格セットメニューを繰り出していることの理由は明らかです。昨今の高価格化を敬遠した顧客離れが無視できなくなってきたからに他なりません。

レキサス州のある店舗では最大13ドル(約2,100円)でスタッフ募集していた image by:Felipe Sanchez/Shutterstock.com

とくに今年の4月1日付でファストフード従業員の最低賃金を20ドル(約3,200円)に引き上げたカリフォルニア州ではその傾向はさらに顕著です。

データ解析プラットフォーム『Placer.ai』のレポートによると、カリフォルニア州内のマクドナルド店舗における4~5月の入店者数は前年度同時期より2.48%減少したのだそうです。他のファストフォード・チェーンも軒並みに客足が落ちています。

image by:Ian Dewar Photography/Shutterstock.com

人件費だけではなく、原材料費も施設維持費も上昇しています。経営側が値上げをすることに同情の余地はあるとは思いますが、必ずしもそうではないとする説もあります。

あるレポートによると、2014年からの10年で全米のファストフードは60%値上がりしました。同期間のインフレ上昇率は30%だということで、つまり一般社会の倍のスピードなのです。

理由はどうあれ、消費者側からすると高いものは高い。たかがハンバーガーに10ドルも20ドルも払っていられるか、とファストフード店から足が遠のく人が増えていることは、私には至極当然のように思えます。

image by:In Green/Shutterstock.com

経営側は格安のセットメニューを話題にすることで消費者をお店に再び引き寄せようとしているのでしょう。消費者にとっても、アメリカに行きたくても物価が高過ぎるからなあと考えていた人にとっても、けっして悪い傾向の話ではありません。

ひとつだけ、注意を喚起したいと思います。こうした格安セットはあくまでも限定的なもので、それ以外の通常メニューも一斉に値下がりしているわけではありません。

一例を挙げるなら、私がマクドナルドの「5ドル・ミール」を注文した同じ日、同じ店ではビッグ・マックを単体で6.69ドル(約1,070円)、フライドポテトと飲み物がついたセットでは12.59ドル(約2,014円)で販売していました。

  • image by:角谷剛
  • ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。
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角谷剛(かくたに・ごう) アメリカ・カリフォルニア在住。IT関連の会社員生活を25年送った後、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー部監督を務める。また、カリフォルニア州コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得している。著書に『大谷翔平を語らないで語る2018年のメジャーリーグ Kindle版』、『大人の部活―クロスフィットにはまる日々』(デザインエッグ社)がある。

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