涼を求め、水の都へ。湧き水あふれる城下町・長崎県島原市への旅
妻で漫画家の大原由軌子とメルマガ『大原さんちの九州ダイナミック』を共同配信しているライターの大原広軌です。
8月8日の立秋を過ぎたとはいえまだまだ暑い日が続きます。そこで今回は、東京から長崎県佐世保市に移住し5年目を迎えた大原家が毎年涼を求めて足を伸ばす、県南東部に位置する島原市をご案内します。
水屋敷〜四明荘
古くから湧水に恵まれ、「水の都」と呼ばれてきた島原。たびたび渇水に襲われる長崎県内にあって、「これまで一度も水不足を経験したことがない」とは地元のお年寄りの言です。
それもそのはず、市内約60ヶ所の湧水ポイントから溢れ出る清水は1日22万トン。街を歩けば、水路を行く水の音が心地よく耳に響きます。
そんな島原には、湧水を使用した庭園を持つ「水屋敷」と呼ばれる旧家があちこちに残っています。中でも抜群の美しさを誇るのが、「四明荘(しめいそう)」。
もともとはお医者様の別宅でしたが、現在は地元の方々が心を込めて管理されており、平成20年には国の記念物に、平成26年には国の登録有形文化財にも登録されました。
1日1000トンもの湧水量を誇る池に張り出す形で廻されている縁からは、澄んだ水をゆったりと往く鯉の姿が。下の写真ではありませんが、子供ならずとも思わず水面を覗き込みたくなってしまいます。
入場無料ながら、おもてなしは景観同様超一流。この日は和服に身を包んだ地元の女性が、湧水で淹れた冷たいお茶をすすめてくださいました。渇いた喉を潤わせながら、畳の間に座り湧水庭園を眺める—。贅沢以外のなにものでもありません。
もてなしてくださる地元の皆さんは完全無償のボランティアながら、やはり建物の維持管理にはお金がかかるというのも現実です。
そのため荘内には寄付金を募る木箱が控えめに置かれているのですが、冷茶・納涼・眼福の代金として500円玉を1枚入れてきた次第。
家族4人でワンコインでは足りなかったかな。そんな気分になってしまうほどの居心地の良さ、これも私たちが島原を毎年訪れる理由の1つです。