廃墟マニアも絶賛。長崎の西に浮かぶ第二の軍艦島「池島」の風景

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2018/07/14

平成24年(2012年)4月9日~10日、閉山10年後の池島

四度目の池島へは、大瀬戸発のフェリーで、軍艦島行きでお世話になった宿のご主人(Tさん)と一緒に出かけた。

まず「長崎さるく」の「池島炭鉱坑内体験ツアー」に参加して、トロッコに乗って坑道の中などを見学した。

港地区のショッピングセンター付近から、ツアー客を見送る。島の人口は300名ほどまで減少しており、桟橋近くのアパート(A6~A10棟)は取り壊されていた。

オプションの炭鉱街散策ツアー、三井松島リソーシスのWさん(元炭鉱勤務の方)の案内で、鉱業所地区3号棟で公開しているアパートの部屋を見学する。

公開部屋から隣のアパート(4号棟)を見る。島には60棟ほどのアパートが残っているが、この棟のように一棟まるごと無住化したものも数多い。

Wさんに長崎市地域おこし協力隊の小島健一さんを紹介していただき、小島さんの案内で島いちばんの高所四方山の風景を楽しんだ。

四方山の手前には神社、その手前には小中学校がある。閉山前(H.12)は262名と149名だった児童数・生徒数は、閉山から10年経って9名と5名にまで減少した。広い校舎は持て余されていることだろう。

小島さんには、鉱業所地区裏手からの通勤経路も案内していただいた。これまでと違う経路で着いた炭鉱夫と子供の像の台座のスローガンは「災害ゼロに向けてガンバロー!!」に変わっていた。

Tさんを港まで見送った後、小島さんからのお誘いを受けて、郷地区の「角打ち」へと出かけた。


店に看板はなく、商店街にこんな店があるとは思いもよらずだった。ジュリーのポスターを見ながら、多くの炭鉱夫の方がここで呑んで語りあったのだろう。

この日の宿は公共施設「池島中央会館」。身支度をして鉱業所地区の東共同浴場に入ると、「池島炭鉱坑内体験ツアー」で坑道を案内していただいた方と出会ったので、ご挨拶して裸で語り合った。

そして再び、郷地区のスナックにやってきた。9年前、4軒営業していたうち1軒を残すのみ。幸いなことに、そのお店は9年前に入った店だった。

スナックのママが9年ぶりの客を覚えてくれていたかどうかは不明だが、赤ちょうちんの話をすると、いろんなお話をうかがうことができた。

一夜一会を祝したカラオケは、小島さんを交えて午前様になるまで続いた。

翌日、鉱業所地区の食料品小売センター付近で2匹のネコを見かけた。「住民よりもネコの数のほうが多い」と言われることがある池島だが、この時見かけたネコはここと桟橋近くだけで、せいぜい10匹だった。

最後まで残ったスナックと角打ちは、ともに2年後(平成26年)に閉店した。この年の秋、小島さんは3年間の地域おこし協力隊の任務を終えて池島を離れた。

赤ちょうちん、スナックの灯も消えて。池島の「これまで」と「これから」

photo by: 小島健一(HP『ようこそ炭鉱体験「池島」へ』より)

炭鉱街には劇的な変化が起こる……。操業開始とともに急に賑やかな街ができて、閉山とともに急に人口が流出し、遺構は史跡へと変わっていく。

炭鉱街を旅すると「街がもつ命の鼓動」を、強く感じることができるように思います。

 

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池島への旅を振り返ると、炭鉱街に賑わいがあったこと、赤ちょうちんで呑んで食べて語らったこと、スナックで呑んで唄って語らったことの3つが、記憶に深く残っています。

photo by: 小島健一(HP『ようこそ炭鉱体験「池島」へ』より)

筆者が複数の住宅地図を照らし合わせて調べたところ、平成12年頃、池島のRC造炭鉱アパート(三階建て以上、寮を除く)は72棟あり、うち港地区の10棟は取り壊されましたが、62棟は現存しています(港地区8棟、郷地区2棟、鉱業所地区52棟)。

平成29年(2017)現在、暮らしがあるのは15棟のみです。

かつて「日本中でここにしかない暮らし」があった池島には、今もあちこちに炭鉱関連の史跡が残されており、炭鉱があった頃を知る人達が暮らしています。

軍艦島が多くの観光の方で賑わっているように、池島にも新たな「ここにしかないもの」が芽生えるのかもしれません。

  • 池島炭鉱坑内体験ツアー
  • 長崎県長崎市 池島
  • 095-811-0369(長崎さるく)
  • 池島港フェリー桟橋前 集合 ※要事前予約
  • 高校生以上2,680円
  • 2018年は9月30日まで。※毎週水曜を除く
  • 午前コース、午後コースあり
  • https://www.saruku.info/tour/gaku_01_1/
  • 九州最後の炭鉱の島「池島」でトロッコに乗車して元炭鉱マンガイドの案内で坑内を探検し、炭鉱機器の模擬操作体験などを行う「坑内体験」ツアー。インターネット予約のみ
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昭和37年生。全国の廃村を調べて旅する Team HEYANEKO 代表。著書に『廃村と過疎の風景』(第1集~第9集、HEYANEKO刊)、『廃村をゆく2』(イカロス出版刊)、『秋田・廃村の記録』(秋田文化出版刊)などがある。池島のような個性がある集落にも、積極的に足を運んでいる。スナックやカラオケには造詣が深く、西城秀樹が亡くなった日の夜は、近所のスナックでヒデキの歌を5曲唄って追悼した。

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