青い家が育てた美の色彩。フリーダ・カーロ激動の人生を知る博物館

死後60年以上たった今でも、世界中で人気を集める女性画家、フリーダ・カーロ。1907年にメキシコシティで生まれたフリーダは、47歳で亡くなるまでに、200点以上の作品を残しました。浮気性のパートナー、ディエゴ・リベラとの関係や、子どもを産めない自分自身を題材にするなど、女性の性や身体を赤裸々に描いた作家として評価されています。死後、その激動の人生が伝記や映画になったことから、広く名が知られるようになりました。そんなフリーダの人生を、「フリーダ・カーロ博物館」の写真とともに紹介します。

才能ある2人の画家が暮らした「青い家」

フリーダ・カーロ

フリーダ・カーロは、1907年、メキシコシティにある「青い家」で生まれました。その家は現在、フリーダ・カーロ博物館になっています。

フリーダ・カーロ博物館は、メキシコシティの中心からタクシーで15分ほどの、コヨアカン地区にあります。

中に入ると、青い壁に「フリーダとディエゴはこの家で暮らした 1929~1954年」と書かれていました。ディエゴとは、メキシコを代表する画家、ディエゴ・リベラのこと。才能あふれる二人は、フリーダが亡くなるまでこの家でともに過ごしました。そう聞くと幸せそうですが、現実はそう甘いものではありませんでした。

では、青い家のレポートとともに、フリーダの人生をひもといていきましょう。

当時の生活がうかがえる展示の数々

家の中は、フリーダたちが暮らしていた当時の家具や調度品が展示されています。こちらの広いキッチンは、タイル張りのメキシコらしいデザイン。

フリーダは裕福な家庭に生まれ、両親や姉妹、乳母らとともに暮らしていました。学校の成績も優秀で、写真家である父親の影響を受け、芸術への興味を高めていきます。

しかし彼女が18歳のとき、通学中のバスの事故に巻き込まれ、3か月間ベッドの上で寝たきりに。身体の痛みと退屈を紛らわせるため、本格的に絵を描くようになったと言われています。

フリーダが絵を描いていたアトリエです。キャンバスの前に、彼女の車いすが置かれています。事故の後遺症で、フリーダは子どもを産むことが叶わず、亡くなるまで背中や足の痛みに悩まされ続けました。


博物館では、フリーダの絵のほか、ディエゴ・リベラの写真や作品も飾られています。事故から3年後、フリーダはすでに有名画家だったディエゴに作品を見せ、彼はフリーダの才能に衝撃を受けました。21歳年上のディエゴとフリーダは、これをきっかけに翌年結婚します。

ただ、すでに2度の離婚歴があった浮気性のディエゴとの結婚を、両親は歓迎しませんでした。

アトリエから見渡せる中庭

アメリカでの仕事が多かったディエゴとともに、フリーダも一時アメリカで生活。その間に、ディエゴとの子どもを2度も流産します。この悲しい出来事は、のちのフリーダの作品に深く影響しました。

青い家には、何度も手術と療養をくり返したフリーダが使った、2つのベッドが展示されています。


1つは昼用、もう1つは夜に眠る用でした。

こちらのベッドの上には、寝ると顔が見える位置に鏡があります。もともとは、入院中の退屈を紛らわすため、母親が病院のベッドに鏡を取り付けたそうです。1日の大半を自分と向き合ううち、フリーダは多くの自画像を描くようになりました

1933年、ディエゴとフリーダはアメリカからメキシコに戻ります。ディエゴの浮気癖はおさまらず、ついにはフリーダの妹と関係を持つまでに。ショックを受けたフリーダはディエゴと別居し、自身も芸術家のイサム・ノグチや、メキシコに亡命していたロシアの革命家、トロツキーらと関係を持ちます。

やがてフリーダの作品が認められ活躍するにつれ、ディエゴとの溝はさらに深まり、ふたりは1939年に離婚しました。その年に描かれた「二人のフリーダ」は、彼女の最高傑作の1つとして、メキシコ近代美術館におさめられています。

離婚後、フリーダは作品制作に没頭しました。経済的な自立を果たした彼女は、翌1940年、ディエゴに再婚の提案をします。そして2人は、フリーダが亡くなるまで、青い家でともに生活しました。

緑と青のコントラストが美しい中庭
静かなベンチで休憩もできる

フリーダが着ていた民族衣装の展示も

中庭を挟んだ隣の建物では、フリーダが生前身に着けていたコルセットや、民族衣装のドレスを見ることができます。

1953年、痛みに耐えきれなくなったフリーダは、右足を切断します。それから亡くなるまでの6年間は、義足を使って生活しました。

ディエゴは、フリーダが亡くなった翌年、別の女性と再婚。その2年後には、ディエゴも亡くなりました。彼は、死後もフリーダの魂とともにあることを望んだと言います。


グッズが盛りだくさんのミュージアムショップ

ミュージアムショップでは、フリーダ関連の書籍やグッズが数多く販売されています。

ポストカードは、お土産にもしやすく人気のアイテムです。

不自由な身体を抱えながら、芸術と情熱に生きたフリーダ・カーロ。彼女の作品のみならず、その生き方も、世界中のファンを惹きつけてやみません。

フリーダ・カーロ博物館は、週末は行列ができるほどの人気スポットですが、事前にホームページでチケットを購入しておけば、早く入ることができます。入場料は、大人200メキシコペソ。日本円で約1,200円ほどです。カメラの持ち込みをする場合は、プラス30ペソかかります。(館内のフラッシュ撮影は禁止)

メキシコ旅行の際は、ぜひフリーダ・カーロ博物館で、彼女の人生に触れてみてください。

  • フリーダ・カーロ博物館(MUSEO FRIDA KAHLO)
  • Londres 247, Colonia Del Carmen, Delegación Coyoacán, Ciudad de México
  • 休館日:月曜とメキシコの祝日
  • 火: 10:00 – 17:30/水: 11:00 – 17:30/木〜日: 10:00 – 17:30
  • http://www.museofridakahlo.org.mx/en
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メキシコ帰りの関西人ライター。大阪在住、夫はメキシコ人。渡航歴はオーストラリア、ニュージーランド、メキシコ、キューバ、韓国など。元劇団員で元バーテンダー。映画、お酒、博多大吉を愛す。

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