日本最古にして世界最古。最北の不夜城「網走監獄」の博物館
刑務所だけど文化財、建築としても一見の価値あり
刑務所や網走の歴史という点以外であげられる博物館網走監獄の楽しみ方が、建築です。ここに移築されている建築物は、明治期後期の歴史的建造物という視点からもとても貴重なものになり、いくつかは国指定の重要文化財や登録文化財となっています。
時代的に和洋折衷のスタイルで作られているものが多く、古いものやインテリアに興味があるという人にとっても、なかなか萌える空間と言えそう。
入るとすぐ正面にある洋館が当時の庁舎で、こちらではざっと「網走刑務所」の歴史がわかるような資料展示がされています。このハイカラな建物は1912年に建てられたもので、刑務所の建物としてはずいぶんお洒落な印象。
ちなみにもともとの刑務所は1909年に火事でほぼ全焼しているので新しい庁舎になりますが、平成も終わる現代においては明治後期の洋風建築はじゅうぶん建築物としての価値もあり、重要文化財に指定されています。
ほかにも、まるで舞踏会にでも使われていたのかと思うような瀟洒なシャンデリアが美しい「教誨堂」(僧侶や牧師が更生指導を行う場所)や、赤煉瓦が積まれた塀に風情を感じる「網走刑務所裏門」、レトロな雰囲気がなんともいえない刑務所の農園作業の先導的施設であった「二見ケ岡刑務支所」など、敷地内に点在する建物を見てまわるだけでもかなりのボリュームです。
そんな中で、同施設の一番の見どころは、なんといっても「舎房及び中央見張所」です。現存する刑務所施設としては日本最古、木造の行刑建築としては世界最古となり、見張所を中心に放射状にのびる5つの舎房は、その規模感にしても囚人たちを監視するために細かく設計された造りにしてもかなりリアルです。
もちろん実際に使われていた刑務所を移築しているものなので、リアルなのは当たり前ですが。見学しながらも、煉瓦敷きの廊下は足元から容赦なくジンジンと冷え込み、厳冬の網走の冬を痛感せずにはいられません。
受刑者たちが置かれた状況の過酷さは私の想像をはるかに超えたものでありますが、寒さだけでもじゅうにぶんに耐え難く、“最果ての刑務所”の厳しさを垣間見た気がします。
当時、この「網走刑務所」の名は日本全国にとどろきわたり、“日本最恐の刑務所”として囚人たちの間でも恐れられたと言われています。
脱獄困難なことでも有名だったようですが、「昭和の脱獄王」と呼ばれた白鳥由栄氏も「網走刑務所」の受刑者のひとりで、白鳥氏はこの脱獄困難な「網走刑務所」でみごと脱獄に成功している人物です。
なかなか興味深い人物であることは間違いなく、「舎房及び中央見張所」内には、囚人が天井をわたって脱獄する様子も再現されているのがユニーク。
こういったユーモアが各所にちりばめられているところが博物館網走監獄のセンスのよさではないでしょうか。
全体的になかなかボリュームのある展示なので、訪れるときは2時間くらいみておくことをおすすめします。建築物などを楽しみたい人は、もう少しゆっくりできるとよいかもしれません。
お腹が空いたらぜひ監獄食をどうぞ味見してみてください。「網走刑務所旧二見ヶ岡農場食堂棟」と「監獄食堂」では、現在の網走刑務所で出されている食事と同じメニューを再現した監獄食をいただくことができます。
なお、冬の網走の寒さはかなりの極感。広い敷地内での見学となるので、とにかく防寒は準備万端にしていくことをおすすめします。
- 博物館網走監獄
- 北海道網走市字呼人1-1
- 0152-45-2411
- 大人 1,080円、大学・高校生 750円、小・中学生 540円
- 休館日:年中無休
- 5月〜9月 8:30〜18:00/10月〜4月 9:00〜17:00
- https://www.kangoku.jp/index.html
image by: AndyLai/Shutterstock.com
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