太古の海水の温泉。フォッサマグナが生んだ、新潟「糸魚川温泉」

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2019/08/31

およそ1,500万年前の太古の海水の温泉

image by:坂本正敬

「糸魚川温泉クアリゾート ひすいの湯」は、『全国温泉大辞典』(旅行読売出版社)にも書かれている通り、フォッサマグナ糸魚川温泉にある唯一の日帰り入浴施設となります。

フォッサマグナ糸魚川温泉については『全国温泉効能名鑑』(日正出版)によると、

<泉質良く高温で湯量豊富>(『全国温泉効能名鑑』(日正出版)より引用)

と書かれています。宿が1つ、日帰り入浴施設が1つずつあり、どちらも化石海水型温泉を楽しめる入浴施設とされています。

この化石海水型温泉とは、何でしょうか。

普通、温泉は雨や雪の水が地中にしみ込み、マグマ(マグマ溜まり)で熱せられた状態で地表に出てきた地下水を言います。

しかしフォッサマグナ糸魚川温泉は違って、雨や雪がしみ込んだ地下水が水源ではなく、熱源もマグマではありません

屋外の駐車場で見られる源泉の様子 image by:坂本正敬

熱源は地中に深く入るほど(マントルに近くなるほど)高くなる地熱。水源は地表からしみ込んだ雨や雪の水ではなく、地中に閉じ込められた太古の海水になります。

フォッサマグナ糸魚川温泉の場合、約1,500万年前の古い海水が1,300メートルの地中に閉じ込められていて、その地底の海水が地熱で温められ、温泉水として地表に出てきているのですね。

ひすいの湯の温泉掲示に書かれた知覚試験の項目では「無色・透明・無臭・塩味」と書かれています。「塩味」と書かれている通り、もともと海水だった温泉ですから、なめると塩辛いです。


泉質はナトリウム・カルシウム−塩化物温泉。いわゆる「温まりやすく、体が冷めにくいお湯」ですね。切り傷、冷え性などに効く温泉としても知られています。

温泉掲示には「無臭」と書かれていると紹介しました。しかし実際には化石海水型温泉らしく、独特のにおいも出ています。また、同温泉は入浴剤の投入はなく、温泉掲示にも「無色」とあります。しかし、お湯には薄茶の色も出ていました。

ひすいの湯は、源泉かけ流しではありません。源泉を循環利用していて、塩素系薬剤も衛生面から使用しています。高温のため井戸水も加えています。それでもなお、化石海水型温泉特有の油っぽいにおいがお風呂場に立ち込めていて、お湯の見た目も渋く、「なんだか、すごく良さそう」とワクワクさせてくれるのですね。

image by:坂本正敬

平日は駐車場に地元ナンバーの車が、たくさん停まっています。その点から予想できる通り、利用者は地元の高齢者が主体です。

そもそもクアリゾート(クアはドイツ語で「治療」の意)をうたっていますから、ドイツの温泉療養施設を意識しており、高齢者の集いの場になっているのですね。

その高齢者に混ぜてもらう形で約1,500万年前の化石海水の温泉につかっていると、独特の旅情が感じられてきます。しかもロケーションは日本海に面し、険路に囲まれた糸魚川。遠く「秘境」の温泉地に入っているという満足感は、かなり高くなります。

 

糸魚川の温泉地はリピーターも多い

ひすいの湯の周辺は、見どころも多いです。先ほども書いたように、姫川沿いに国道148号線を南に向かい姫川渓谷を越えれば、国際的なリゾートの白馬に到着します。その途中には「明星山」や「高浪の池」もあります。

ひすいの湯と同じ敷地内にある「ホテル國富アネックスimage by:坂本正敬

日本海に出れば、親不知の展望が楽しめる「道の駅 親不知ピアパーク」、新鮮なベニズワイガニを直売所で食べられる「道の駅 マリンドリーム能生」もあります。

富山県に抜ければ、TRiP EDiTORでも紹介した「ヒスイ海岸」もあるのでした。

ひすいの湯と同じ敷地にある「ホテル國富アネックス」は、新潟県が主導する「第7回新潟県観光地満足度調査」において、総合満足度が高かった宿泊施設(※1)で第4位に入っています。

第6回の調査では第5位ですから、最新調査では順位を上げているのですね。

同調査によれば、糸魚川地域の温泉は新潟県全体を見渡しても、観光客のリピーターが多い地域だというデータも出ています。

長野から北陸へ抜ける途中で、逆に北陸から新潟、長野へと移動する際には、休憩所・宿泊地としてフォッサマグナ糸魚川温泉をチェックしてみてくださいね。

  • 糸魚川温泉クアリゾート ひすいの湯
  • 新潟県糸魚川市大野298-1
  • 025-553-2222
  • 定休日:なし
  • 10:00~22:00(受付終了21:30)
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翻訳家・ライター・編集者。成城大学文芸学部芸術学科卒。富山在住。主な訳書『クールジャパン一般常識』、新著(共著)『いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日』。北陸のWebメディア『HOKUROKU』創刊編集長。WebsiteTwitter 

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