鬼に金棒、大根まで。日本の「デザイン灯台」が自由すぎておもしろい
皆さんの暮らすまちにはどのような「灯台」がありますか? 船乗りでもない限り、なかなか生活に関係のない施設だと思います。しかし、日本にはユニークな灯台がたくさんあって、観光の拠点としても生まれ変わりつつあるとの話。
一風変わった特徴を持つ灯台は「デザイン灯台」と命名され、とくに目を引きます。そこで今回は、全国の灯台を管理する海上保安庁への取材を基に、全国にあるデザイン灯台を紹介します。
役割が変化しつつある灯台を観光地に
日本の灯台は、船の「道しるべ」として海上保安庁が管理しています。
明治時代に入り、国内初の洋式灯台として神奈川県横須賀市に「観音埼(かんのんさき)灯台」が誕生すると、地域の発展に欠かせないものとして、全国各地で誘致活動が行われるようになったそうです。
しかし現在は、GPS(衛星利用測位システム)などの航海計器の発達と普及を受けて、灯台の立ち位置は変化しつつあります。
2004年(平成16年)をピークに、灯台の数そのものも減少。厳しい財政制約下、重点的・効果的・効率的な灯台づくりと運用が求められる時代となってきたのですね。
洋式灯台の建築が始まった明治元年から見て150年の節目となる2018年(平成30年)には、交通政策に関する重要事項を調査・審議する交通政策審議会から「第4次交通ビジョン」が答申され、灯台観光振興支援の方向性が示されました。
具体的な方向性としては、地方公共団体を中心とした関係団体との連携のなかで、以下のような海上保安庁の動きが明確になりました。
- ・登れる灯台を増やそう
- ・一般公開する灯台を増やそう
- ・情報発信に力を入れよう
灯台というシンボリックな存在をより効率的に運用しながら、海上安全思想を普及させ、地域活性化にも貢献する取り組みです。
航路標識の一部として光波標識があり、その一部として灯台があります。全国の地域の歴史に密接にかかわっている灯台を、観光地としてもっと充実させていこうという動きがより明確になったのです。
デザイン灯台の始まりは、宮崎県「美々津灯台」から
この灯台観光振興支援の流れに、かねて進んでいたデザイン灯台の動きも組み込まれます。デザイン灯台とは、地方の観光資源、特産品などをモチーフとしたシンボルを灯台に付与し、航路標識を「デザイン化」する取り組みです。
海上保安庁によれば、戦前の話なので詳細な記録が残っていないながらも、昭和9年頃宮崎県に建てられた「美々津(みみつ)灯台」から始まった流れのようで、それなりの歴史があると考えられそうです。
現に、執筆時点で、デザイン灯台は全国に41基もあるそうです。このあと順に紹介していきますが、なかなかの数ですよね。
筆者の暮らす富山県にも3カ所あって、
- ・滑川港防波堤灯台(富山県滑川市)
- ・黒部港北防波堤灯台(富山県黒部市)
- ・伏木外港東防波堤灯台(富山県高岡市)
がデザイン化されています。
滑川港は正直、特別な印象を受けませんが、黒部港の灯台は、地元の祭りに由来した「たいまつ祭り」のデザインが印象的で、伏木外港の灯台は、日本海側で最初の洋式灯台を模倣したデザインが目を引きます。
見た目にも分かりやすい特徴を持つこのような灯台が全国に散らばっているのですね。