外国人にじわりと人気。知るひとぞ知るニッポンの「古民家ステイ」

TRiP EDiTOR編集部
TRiP EDiTOR編集部
2020/01/14

政府が力を入れる兵庫県と長崎県の古民家

全国各地で使われなくなった古い建物を再生させようと、国も「古民家」の再生に力を入れ始めました。その背景には近年、都市部への一極集中や高齢化などの影響により、地方の空き家問題が深刻化があります。

2013年には空き家の件数は約820万棟と発表されていますが、2033年には2,150万戸に増えるとの見方もあります。

このような背景があり、政府が推し進めているのが「歴史的資源を活用した観光まちづくり」です。

このプロジェクトのなかでも古民家をつかった町おこしで再生した町に注目しました。それは兵庫県篠山集落丸山長崎県小値賀町の3つ。

篠山城下町ホテル NIPPONIA/兵庫県

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明治前期に建てられた元銀行経営者の旧住居をリノベした棟image by:NIPPONIA

篠山城を中心とした城下町には、町屋や武家屋敷などの歴史的建築物が多く残っていましたが、人口減少にともない、その多くが空き家となり、取り壊され始めました。

昼間に立ち寄る観光客は多いものの、観光客の宿泊率も5%未満に低迷

重要伝統的建造物群保存地区の河原町の街並みや豊かな農産物などがある町の魅力を十分に伝えきれていない状態でした。

そんななか歴史的な街並みを守ろうと、政府の取り組みとして、2009年ごろから城下町の空き家を活用する動きが始まりました。そして、2015年10月に地域観光活性化ファンドを活用して、開業したのが「篠山城下町ホテル NIPPONIA」です。

室内の雰囲気は古民家そのもの /image by:NIPPONIA
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蔵をリノベーションした客室は歴史の重みがある/image by:NIPPONIA


この古民家ホテルのコンセプトは「篠山城の城下町全体がひとつのホテル」。

城下町全体をひとつのホテルと見立て、築100年以上の古民家を含んだ5つの宿泊棟が町に点在する宿泊施設なのです。

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上質な日本建築を感じる空間image by:NIPPONIA
レトロな雰囲気の食堂image by:NIPPONIA
城下町の雰囲気が満点 image by:NIPPONIA

きれいにリノベーションされていますが、古民家の良さはそのまま残されています。

観光庁によると、ホテルの初年度の宿泊者数は1,800人で、いまも宿泊者の口コミなどで評判が高く、来場者数は順調に伸びています。現在は日本人の旅行者がほとんどだそうですが、今後はインバウンドの誘客にも取り込んでいく予定なのだとか。

  • 篠山城下町ホテル NIPPONIA
  • 兵庫県篠山市西町 西町25 ONAE棟
  • 0120-210-289(NIPPONIA総合窓口)
  • https://www.sasayamastay.jp/

集落丸山/兵庫県

集落丸山の景観image by:集落丸山

集落丸山」は、篠山城下町の北に位置する最奧の集落です。

観光庁に問い合わせてみたところ、かつては12戸のうち7戸が空き家という、限界集落でした。

こんな状況のなか、残った5世帯がNPO法人集落丸山を結成し、美しい村の古民家と自然環境が失われよう再生に向けて動き出したのがすべての始まりです。

2009年ごろに一棟貸し宿泊施設3棟とフレンチレストランを開業。そして利用者も徐々に増え始めコミュニティビジネスとして運営も順調です。

こちらの古民家は築150年の古民家を新しく改修・改築した宿です。のどかな農村地帯にあるこちらの古民家はゆっくりと過ごせる場所として人気です。

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古民家の良さを感じさせる室内image by:集落丸山

開業してから、実際にどのような変化があったのでしょうか。

民家を改修活用することで、事業が生まれ、また事業者さんのオーナーやスタッフが移住や通勤されるので、現実的に移住が促進されていきます。家族で移住されるケースもあるので、子どもの数が増えていたり、夫婦で作家の方やお店を出されている方も多いのでご出産され、篠山で子育てもされています

と、集落丸を運営する一般社団法人ノオトの玉垣さんは移住者の促進につながったと話してます。

観光については、私どもは大量に押し寄せる消費の観光は目指しておりません個人やグループがゆっくりと滞在しその地の食や文化、歴史を体感いただくことを目的としております。観光客の質は、ゆとりのある方、クリエイターなどへ少しずつ変化していると感じます」と観光ビジネスのコンセプトを話します。

ベッドルームも居心地抜群image by:集落丸山

外国人の人気もある古民家ですが、インバウンドも視野に入れているようです。

現状は積極的にPRはしておりません。しかし、体制が整い次第、宿泊ブランドの「NIPPONIA」や「集落丸山の宿」の海外向けPRを進めていく予定です。ターゲットは欧米の富裕層特にフランスの方に魅力を感じてもらえる空間になっていると思います。
海外の方は日本に、日本の原風景や日本の暮らしを体感しにこられると思います。
世にある商品は、ツアーなどの『パック化された都心〜名所を周るコース』が多いですが、本来求められているのはそういったものではなく私たちが事業する地域などに守り継がれている歴史や文化、生活、生業を求めていると思います。集落丸山には日本の原風景と生活があります」。
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地元の食材を使った美味しいご飯image by:集落丸山

弊社のような中間支援組織なしでも自走していけるよう体制が整えられたらと思っています。もちろん、丸山との縁は深いものですからこれからも良い関係を続けていきますが、次のステージに移行中です。古民家にはその土地土地の歴史や文化、生活の在り様がつまっています。それらを再生することで、全国各地域に根差す文化や歴史を守り、次世代へ繋げていけるよう活動していくつもりです」と今後の目標も語っています。

集落丸山には、農業体験や料理教室、陶芸体験、城下町の散策などのアクティビティもあるので、アクティブに過ごしたい方も満足できますね。

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