自力脱出不可?仕掛けだらけの迷宮、金沢「忍者寺」の魅力

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2019/03/08

忍者寺は金沢城の「出城」

妙立寺(忍者寺)近くに流れる犀川 image by:石川県観光連盟

手元に地図があると分かりやすいですが、金沢の城下町は浅野川と犀川という2本の一級河川に挟まれた場所に位置しています。川を自然の要害と見立て、当時の加賀藩は両河川の川べり(城から見た対岸)に寺院を密集させ、寺内に侍が待機できるようにしました。外敵が攻めて来た場合、川とお寺を防衛線にするためですね。

金沢城公園 image by:金沢市観光協会

金沢の現代地図を見ると、金沢城の東側に流れる浅野川の右岸、西側に流れる犀川の左岸には寺町と呼ばれるエリアが残っていると確認できます。

妙立寺犀川沿いにある寺町の一角に位置しており特に妙立寺に関しては、寺院群の中でも出城のような役割を持たされていたため、来るべく戦争に備えて巧妙な仕掛けが随所に施されているのです。

ガイドからはぐれると自力では帰ってこられない迷宮

image by:金沢市観光協会

定かではありませんが、筆者はいままでに3回以上は「忍者寺」のガイド付き拝観を体験しています。最初は北陸に移住してきた10年以上前の出来事で、その後は数年間隔で友人や知人と訪れています。そのたび、拝観者が増えて、外国人の姿も目立つようになってきた印象があります。

あらためて土地の人に聞いてみると、もっと昔は予約も必要なかったとの話ですが、いまでは20万人以上が訪れる人気の観光スポットに成長しています。拝観しようと思うと、当然予約が必須になります。

拝観の流れは、希望者グループがいくつかまとまって、ガイドの話を聞きながらお寺の中を30~40分ほど巡る形です。「決してガイドから離れないでください。帰って来られなくなります」といった決まり文句で参加者を笑わせるガイドもいる通りお寺の内部は複雑で、どれだけ方向感覚に優れた人でも、初見では自分がどこにいるのか途中から分からなくなってきます。

イメージです image by:pongwan sukpoka/Shutterstock.com

仕掛けはどれも巧妙で、例えばひとつの踊り場に面してAとBの通路が「Π」のように隣り合っている場所があります。両方の扉を1枚の引き戸が兼ねているため、右側Aの通路から踊り場に出ようと引き戸を横にスライドさせると、その引き戸がBの通路の入り口を隠すといった設計になっています。

仮に加賀藩の侍が敵に追われる中で、Aの通路から踊り場に出て、Bの通路に逃げたとします。他藩の敵は加賀藩の侍を追って踊り場に出ても、自分で開けた扉がBの通路を隠しているため、相手を見失ってしまうのです。

金沢城まで続く脱出用の横穴がある?

金沢城 image by:石川県観光連盟

「忍者寺」には横穴が彫られた井戸があり、金沢城まで続いているという話もあります。「忍者寺」から金沢城までは1kmほどの距離があり、その途中には犀川が流れています。


物理的に横穴が通じているとは考えにくいですが、ほかの仕掛けに関する説明を受けた後で聞かされると、「なんだか本当に通じていそう」と思わせてくれるすごみが「忍者寺」にはあります。

ちなみに、忍者寺の拝観料は1,000円で、自動車で訪れた人は35台分の駐車スペースを確保した極楽寺駐車場の利用が必要になります。金沢のにぎわいの中心である香林坊から見ると、南大通りを犀川方面に進み、野町広小路を左折、蛤坂の信号で右折してください。駐車場はその蛤坂の信号を直進したすぐ右手にあります。

にし茶屋街 image by:金沢市観光協会

また「忍者寺」の周囲はまさに寺町といわれるだけあって、70を超える寺院が密集しています10年ほど前に初めて訪れたとき、寺町を着物で歩いている地元の女性を見かけ、思わず見とれてしまった思い出もあります。

蛤坂の信号から「忍者寺」の方面に歩き、「忍者寺」を通り過ぎると、六斗の広見と呼ばれる広場もあります。春には泉野菅原神社の境内に美しい桜を眺められますよ。にし茶屋街も目と鼻の先ですから、周辺散策も含めて「忍者寺」を楽しんでみてくださいね。

  • 妙立寺(みょうりゅうじ)
  • 石川県金沢市野町1-2-12
  • 076-241-0888
  • 1月1日及び法要日(詳細は電話にて要問い合わせ)
  • 平日 9:00〜16:00(1時間ごとのご案内)/土日祝日 9:00〜16:30(30分ごとのご案内、冬期は平日と同じ)
  • http://www.myouryuji.or.jp/

※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。

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翻訳家・ライター・編集者。成城大学文芸学部芸術学科卒。富山在住。主な訳書『クールジャパン一般常識』、新著(共著)『いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日』。北陸のWebメディア『HOKUROKU』創刊編集長。WebsiteTwitter 

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