降りてみたいけど、下車できない?世界にあるちょっと変わった駅たち
ホームにジャングルがある「アトーチャ駅」
次は、同じヨーロッパのスペインの首都マドリードにある駅の話。駅の構内で一般的に見かける光景としては、何を思い浮かべますか?ホーム、改札機、売店、待合所、券売機といった感じでしょうか。
しかし、マドリードにある「アトーチャ駅」の待合室兼カフェテリアには、見ごたえたっぷりの演出が施されています。
いまから100年以上前につくられた旧駅舎に、ヨーロッパ各地で同時期に盛んにつくられた「植物園」のような一角があるのですね。
この植物園自体は1992年と比較的最近につくられています。駅の使われなくなった部分に、熱帯で自生する植物を中心とした260種、7000本を超える木を植え、無秩序な「森」を誕生させたのですね。その森の広さは4,000平方キロメートルに達します。
そのなかには、マダガスカル原産のタビビトノキも含まれています。駅の植物園に植える木としては、おしゃれなチョイスですよね。マドリードに行ったら、コーヒー片手に立ち寄りたいスポットです。
民間人の出入が統制された「都羅山駅」
次は、お隣の国。朝鮮半島の北朝鮮と韓国の国境近辺にある駅を紹介します。両国の軍事境界線に沿った民間人出入統制区域内にある「都羅山(トラサン)駅」です。
かつて、サッカーワールドカップを日本と韓国で共催した2002年に誕生した駅で、ソウルから約56km北、平壌から約205km南に位置します。
駅の看板には、「Not the last station from the South, but the first station toward the North(南からの終着駅ではなく、北への出発駅)」と書かれています。
ほかにも、ロシア・中国と地続きで鉄道網が敷かれる、夢のような世界を描いた地図が掲載されるなど、南北の融和や世界平和を演出するプロパガンダに満ちた駅なので、建物も奇麗に整備されています。
しかし、現実には軍備が密集するエリアに位置していて、周囲は、多数の地雷が埋められている地雷原です。
駅ができてから現在までの20年近くで、北朝鮮は核保有国になりました。その間に生じたさまざまな理由から、北朝鮮行きの電車は現在、貨物列車も含めて運行されていません。
とはいえ、都羅山駅のツアー(DMZ Tour)は韓国側で開催されており、およそ2km先にある軍事境界線の向こう側に広がる北朝鮮を、高台から望遠鏡で眺めるプログラムを含めて、少なくない人が訪れています。