一獲千金のチャンスにかける。沈没船から実際に見つかった「財宝」たち

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2023/02/24

ロシアの軍艦に伝わる財宝伝説

近代化改装前の「アドミラル・ナヒーモフ」(1890年)image by:See page for author, Public domain, via Wikimedia Commons

もちろん日本でも沈没船が発見された過去はあります。例えば、1980年9月中ごろに発見された、帝政ロシアのバルチック艦隊「アドミラル・ナヒーモフ号」(以下、ナヒーモフ号)です。

バルチック艦隊とは日露戦争で、日本海海戦を戦ったロシアの軍艦の一群です。そのうちの一隻であるナヒーモフ号が、長崎県対馬沖合の海底で見つかります。

この船に関しては、日露戦争後から財宝伝説がささやかれ、大正時代に入っても水揚げを試みる人たちが後を絶たなかったみたいです。

日本唯一の海底資源掘削会社だった日本海洋開発(現在は倒産)が実施した潜水調査によって、1本のインゴット(金属の塊)がナヒーモフ号から引き揚げられたと、朝日新聞の同年9月17日の朝刊で報じられています。

共同通信社の同年9月19日の記事では、日本海洋開発の当時の社長・玉内克己さんがインゴットをプラチナではないかと語っている様子が分かります。

時事通信社『沈没船の財宝 写真特集』では、「船の科学館」にて、1980年9月22日に公開されたプラチナの写真も確認できます。

このプラチナのインゴットが、ナヒーモフ号には少なくとも1,000本は積まれているとも発表されたみたいです。

 

ナヒーモフ号の砲身が水揚げされる

改装後の「アドミラル・ナヒーモフ」(1903年)image by:See page for author, Public domain, via Wikimedia Commons

財宝・金貨などがナヒーモフ号に積載されていたとする、当時のフランス駐在大使の電報の存在なども注目され、マスコミ各社の報道は加熱。10月初旬の段階で、日ソ(現在のロシア)の外交問題にまで発展します。

一説には、8000億とも1兆円ともいわれる財宝が船体に眠っているといわれたので、所有権をソ連が主張し始めたのですね。


10月20日には、ソ連の主張に対する、当時の日本政府の見解が発表されます。話題の同船が本当にナヒーモフ号だとすれば、日本の戦利品であり、ソ連側の所有権主張は認められないとの内容でした。

しかし、これだけ夢のある財宝船の話を知る日本人はいま、少ないのではないでしょうか。それもそのはずです。結局は、財宝が見つからないまま引き揚げ作業が終わってしまったからです。

1980年10月28日の参議院の内閣委員会の議事録を見ると、日本海洋開発の当時の社長は外務省の調査に対し「海底の船がナヒーモフ号であると推定はされるけれども、まだ確認されるに至っていない」と発言している様子が分かります。

日付に注目してください。10月後半の時点ではすでに、日ソの外交問題がヒートアップしてしまっている状況です。

言い換えれば、ナヒーモフ号かどうか、本当のところがこの時点でも分からないままに問題が、エスカレートしていったのですね。

結局は、どうなったのでしょう。共同通信社の当時の報道を根拠に、経緯を追ってみます。

現在も残る「アドミラル・ナヒーモフ」の主砲身。image by:nattou, Public domain, via Wikimedia Commons

少し戻って10月5日の段階で(日ソの外交問題になり始めた時期)、資金提供者である日本船舶振興会(現・日本財団)の会長(当時)笹川良一さんの指示によって引き揚げ作業が続行されました。

16本のインゴットとネームプレートが10月11日に新たに公開され、同年の12月1日には成果として、装甲巡洋艦アドミラル・ナヒーモフ号の主砲の砲身が水揚げされます。その主砲は現在「船の科学館」に展示されています。

<昭和55年(1980)頃の調査の際に、対馬沖の水深97メートルから引き揚げられたものです>(船の科学館の公式ホームページより引用)

ちなみに本物のナヒーモフ号ではあったみたいです。

しかしその後、報道は途切れます。肝心のお宝発見の報道は見当たりません。東京スポーツに掲載されたコラムによればその後、引き揚げられた16本のインゴットはプラチナではなく全て鉛だと判明したようです。

日本海洋開発は現在、倒産していますし、玉内克己さんはその後、ボルネオ島で奇怪な魚の養殖をやって暮らしただとか、不審死を遂げたなどと言われています。真相は、やぶの中といった感じで終わったのですね。

少なくとも現在、財宝探しを引き継ぐ人は存在しないようです。地元の人たちの酒飲み話くらいにしかなっていないみたいですね。

このように日本のケースは別として、難破船から実際に財宝が見つかった話はまだまだ世界にたくさんあります。

海外旅行などで近々訪れる国があったら、その訪問先の国では、どんな財宝が見つかった歴史があるのか、皆さんも調べてみると、旅の楽しみや深みがちょっとだけ深まるかもしれませんね。

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翻訳家・ライター・編集者。成城大学文芸学部芸術学科卒。富山在住。主な訳書『クールジャパン一般常識』、新著(共著)『いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日』。北陸のWebメディア『HOKUROKU』創刊編集長。WebsiteTwitter 

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