人生初のボブスレーに挑戦して、自分の知らない自分に会いに行った話

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2022/02/04

さて、この映画『クール・ランニング』ですが、実話を基に作られたフィクションです。例えば映画のなかでは、ボブスレーチームのメンバーは、主人公が負けた陸上競技大会の短距離の選手たちで構成されています。

しかし実際はジャマイカにボブスレーチームを作りたいと考えたプロデューサーが地元の新聞に「選手募集」の広告を出しても反応ゼロだったので、ジャマイカ国防軍のアスリートを招集して、彼らを鍛え上げ、本当にカルガリーオリンピックに出場したという話だそうです。

が、むしろそちらの方がドラマチックでもあります。「広告を出しても反応ゼロ」というところに、どれだけ周囲の理解が得られなかったのか、言い換えると、環境に恵まれていないのかがよく分かりますね。

動画配信サービスのAIがなぜ私にこの動画をオススメしたきたのかは全くの謎ですが、もしかすると、頑張りたいと思っていても頑張れる環境ではないと不貞腐れている場合ではないぞという、神様からのメッセージなのかもしれないと思った私。

であれば、ちょっとでもジャマイカチームの気持ちが分かるかもしれないと思い、ボブスレーに挑戦してみることにしたのです。

初心者でも楽しめるぞ、擬似ボブスレー体験

とはいえ、「氷上のF1」の異名をとるボブスレーに気軽に挑戦できるわけもありません。氷の張ったボブスレーコースに、空気抵抗を抑えた専用のソリ…。そのような環境はなかなか身近ではないのです。

しかし「いま自分が置かれた環境で最大限の努力をする」まさにこれがキーワードだったではありませんか。ということで、自分が置かれた環境でできるボブスレーをみつけてきました。

それが茨城県日立市にある「奥日立きららの里」の滑り台「わくわくスライダー」です。

image by:徳永秀一郎

なんだ、ただの滑り台かよと侮るなかれ。こちらの滑り台、なんと日本一の長さを誇ります。その距離なんと1,188m。およそ1km強の滑り台です。そんな滑り台滑ったことあります?


しかも、このボブスレータイプの滑り台ですが、もちろん滑り台の表面は氷ではありません。しかし少しでも水で濡れていると、想定以上のスピードが出てしまい、おまけにブレーキが効きにくくなってコースアウトの危険があるので使用中止になるというものです。

標高430m付近から、高低差70mを一気に下りますので、その時速は約30km/hになるそう。面白すぎるではありませんか。そうと分かったら、早速挑戦です!

料金は大人1回530円、子ども(小学3年生以上)1回320円です。3回滑ることができる回数券もあり、それだと大人1,280円、子ども740円です。

私のなかでは、ここは紅葉美しい奥日立の滑り台ではなく、人生の大舞台、冬季オリンピックのボブスレー会場であります。声援をくれる観衆は、飼育されているポニー、ヒツジ、そしておそらく遠くから野生のイノシシたちです。

競技は予選、準決勝、決勝の3回挑戦が大正義ではありませんか。ということで迷うことなく3回券を購入しました。

image by:徳永秀一郎

茨城弁の魅力的で独特なイントネーションで、ボブスレーの操作についてのレクシャーを受けたら、思い切ってレバーを前に倒し、フルアクセルでスタートです。クール・ランニング(旅に無事あれ)!!

いや、思った以上にスピードが出ます。速い!そしてコーナリング。

茨城弁で「左に曲がるときは、自分の重心も左に。右に曲がるときは右に寄せないと転倒したりコースアウトしたりするよ」といわれていたので、一生懸命体重移動していきます。

そしてなるべくスピードを保ったまま、ヘアピンカーブゥゥゥ。遠心力で体が外に振られます。

自分は体を内向きに抵抗しなければなりません。本当に、思った以上にエキサイティングです。もちろん、ブレーキをかけてゆっくり下ることもできるのですが、私は金メダルを目指しているのです。

あっという間に山を下り、ロープで約4分間引っ張られて、再びスタート地点に戻ります。戻ってきたら茨城弁で「いや、はやかったね」といわれました。

image by:徳永秀一郎

しかし私は思ったのです。時速30km程度でも結構な恐怖心を感じますし、スピードを上げて滑るなら遠心力に負けない体力も必要でした。であれば、時速約130~140kmの、実際の氷上で行われるボブスレーは、とてつもなく強靭な肉体と精神が求められるはず。

しかもそれを2人や4人といった複数人で息を合わせて行わなければならないわけで、選手たちはなんてすごい競技に挑戦しているんだと。

そしてもうひとつ、よくぞ「日本一の滑り台」をここに作ったなと。というのも、こちら「奥日立きららの里」は、敷地が東京ドーム10個分のおよそ48ヘクタールのキャンプ場なのです。

image by:徳永秀一郎

入場料は大人320円、子ども100円です。テントを張った従来のキャンプはもちろん、グランピングもできればコテージにも泊まれる、動物もいるし、花はきれいに咲いているし、こうしたアトラクションも備えられている、それはそれは美しいキャンプ場なのですが、そもそもはキャンプ場ではなく、農業研修場として作られた場所だったそうです。

image by:徳永秀一郎

したがって現在でも園内に育てられている植物にその名残を少しだけ見ることができます。

ところが収穫を夢見て張り切って作物を育てていたところ、すぐにイノシシが登場して、頑張って育てたものを全てきれいに食い荒らされてしまうという困難に直面しました。ここでは農業研修は無理じゃないかと絶望だったそうです。

image by:徳永秀一郎

しかしそれで諦めてはいけない、もっている地域の宝を何とか活用できないだろうかということを考え、それであればいっそのことキャンプ場にしてしまえということになり、キャンプ場にするなら何か集客の目玉になる「日本一」が必要だろうということから、この「わくわくスライダー」に至ったそうです。

まるで映画のようなストーリー。ボブスレー選手たちだけではないのです。誰もが困難にぶつかって、紆余曲折を経た上で、輝く未来にたどり着いているものなのです。

image by:徳永秀一郎

初心者向けとはいえ、実際に経験し、紆余曲折ストーリーを聞いて、自分が成長したので、「どうぶつのえさ」自動販売機で餌を買い、飼われているポニーとヒツジに与えます。

image by:徳永秀一郎
image by:徳永秀一郎
image by:徳永秀一郎

こういう課金イベントは大歓迎です。とてもかわいいですね。課金します。しますとも。心が洗われます。

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