一体なぜ?絶対に持ち主にはなってはいけない、呪われた「屋敷&宝石」

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2023/04/07

コ・イ・ヌール・ダイヤモンド

メアリー女王の王冠の前十字にある、ダイヤモンド。image by:シリル・ダベンポート (1848-1941), パブリック ドメイン, via Wikimedia Commons

次も、ダイヤモンドの話。ヒンドゥー語で「光の山」を意味するらしい「コ・イ・ヌール・ダイヤモンド」です。

約105カラット(1カラットは200ミリグラム)もあるこの世界最大級のダイヤモンドは現在、先ほど話に出てきたロンドン塔に展示されています。

もともとは、先に亡くなったエリザベス女王(エリザベス2世)の祖父母の祖母にあたるヴィクトリア女王の時代に、東インド会社(東洋貿易を独占する会社)が植民地だったインドで獲得し、ヴィクトリア女王に「寄贈」したという歴史が知られています。

ヴィクトリア女王は、ヴェルサイユ宮殿で行われたナポレオン3世の舞踏会などで着用してきましたが、男性に不幸をもたらすという言い伝えが当時から存在したらしく、イギリスの王族の女性以外は着用してはならないとヴィクトリア女王自身が決めたそうです。

ブローチとして身に着けているヴィクトリア女王。image by:Franz Xaver Winterhalter, Public domain, via Wikimedia Commons

その後、時代は下って、現在のチャールズ国王(チャールズ3世)の祖母で、亡くなったエリザベス女王(エリザベス2世)の母親である「クイーン・マザー」と呼ばれたエリザベス・ボーズ・ライアン王妃は、このコ・イ・ヌール・ダイヤモンドが装着された冠を着用しました。

しかし、「クイーン・マザー」が亡くなった後はロンドン塔の展示室に入り、誰も着用しなくなります。先ごろ亡くなったエリザベス女王(エリザベス2世)も、コ・イ・ヌールを装着した王冠を避けてきたそうです。

その背景には、インドからイギリスに渡るまでの数百年間、ムガル帝国(インドにおける最後のイスラム帝国)から始まってシク王国(インド北西部のシク教の王朝)に至るまで、数々の統治者の手を転々としてきた歴史があります。

image by:See page for author, Public domain, via Wikimedia Commons

シク王国と東インド会社の戦争があり、シク王国最後の君主から東インド会社が奪った形になっているため、このダイヤモンドは、インドとイギリスの紛争の問題にもなっているのですね。

インドからすれば奪われた富であり、イギリスに支配されていた時代の象徴でもあります。


1947(昭和22)年に、イギリスの植民地からインドが独立すると、イギリスに返還を求めました。

イギリス王室のなかにも、入手経路を気にする向きがある様子。そのため、2002(平成14)年の「クイーン・マザー」の葬儀後、ロンドン塔の展示室に展示されたままで、コ・イ・ヌールはお目見えしていません。

チャーズル皇太子(当時・現国王)の戴冠式に妻のカミラ王妃が着用するかもしれないと噂されましたが、国際問題を避け、コ・イ・ヌールは使われませんでした。

イギリス旅行でロンドン塔を訪れた際には、この伝説のダイヤモンドも見学しておきたいですね。

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翻訳家・ライター・編集者。成城大学文芸学部芸術学科卒。富山在住。主な訳書『クールジャパン一般常識』、新著(共著)『いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日』。北陸のWebメディア『HOKUROKU』創刊編集長。WebsiteTwitter 

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