凛とした空気に触れる。修行僧が暮らす禅の大本山、福井「永平寺」へ

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2019/08/28

修行僧のガイドで永平寺を歩き回るツアー

image by:坂本正敬

観光客にとって永平寺の最大の楽しみは、お寺のツアーです。観光客は通用門で拝観料(500円)を支払うと、伝道部に所属する修行僧(雲水)のガイドで、70を超える建築物の中でも七堂伽藍(がらん)といわれる7つの代表的な建物を歩いて周れるようになってます。

そもそも七堂伽藍はお寺の主要な7つの建物で、その7つは、お寺によって異なります。

永平寺の場合は、住職の説教の場所(法堂)、釈迦(しゃか)の仏像を祭るお堂(仏殿)、食堂(庫院)、修行僧の生活の場(僧堂)、浴室、便所(東司)が7つの建物です。

それぞれが人体の構成を意識して配置されており、法堂は頭、仏殿は心臓、庫院は左手、僧堂は右手、浴室は左足、東司は右足の位置に置かれています。

お寺の主要な7つの建物に、便所や浴室、食堂が入っている点も永平寺の面白さといえます。食事もトイレも、まさに修行の一部なのですね。

1泊2日の修行体験なら精進料理を食べられる

image by:坂本正敬

精進料理や座禅体験も、永平寺観光の楽しみのひとつです。もちろん、精進料理といっても、修行僧が食べる本物の食事とは異なります。

本物の精進料理の献立は、おかゆとゴマ塩だったり、少量のごはん(米や麦)と少量の野菜や海藻、豆腐など植物性の食べ物だったりします。

修行僧(雲水)がインタビューを受けた大昔のテレビ番組をあらためて見返すと、修行生活に慣れないうちは、栄養が限られているため、ほとんどの人がかっけになると若い修行僧たちが答えていました。しかし体が精進料理に慣れてくると、不思議に症状も治ってくるのだとか。

観光客が口にできる精進料理は、さすがにここまで質素ではありません。参籠(さんろう)と呼ばれる緩やかな1泊2日(2食付き)の修行体験に参加すれば、肉や魚は出ませんが、豆腐、キノコ類、根菜、コンニャク、揚げ昆布、湯葉、漬物、栗きんとんなどが客膳に盛られて出てきます。


image by:Shutterstock.com

ただ、参籠が緩い修行体験だといっても、入山から下山までのスケジュールは綿密に決められていますし、世話係である修行僧の指示に常に従う必要があります。

お酒も飲めません。食事中は「五観の偈(げ)」と呼ばれる教訓を口にした後、ひたすら無言で食べなければいけない食事ルールもあります。もちろん、宿泊場所は大部屋です。

そうなると、気軽に立ち寄って体験したい方にはちょっと難しいかもしれません。

しかし、2019年中には門前町に個室で寝泊まりでき、精進料理も食べられて、お寺で座禅体験もできる、外国人旅行者対応の宿を永平寺がオープンします(運営は民間企業)。

気軽に精進料理だけを楽しみたいという場合はオープンまで待って、門前町に誕生予定の宿を利用してみるといいかもしれません。ちなみに料理ではなく座禅だけであれば、予約なしで毎日500円で体験させてもらえますよ。

永平寺周辺のブランド力もアップし続けている

image by:坂本正敬

現在の永平寺の門前町は1955年に作られた新道がメイン、土産物屋や飲食店が軒を連ねています。この門前町散策は、観光客の楽しみのひとつです。

そして冒頭でお話したように、2018年8月にはかつての門前町の中心、永平寺川沿いの旧道が幅3m、長さ350m近くの石畳の道に再整備されました。

川の土手が石積みになるなど、景観にも統一感が出されています。この通り沿いに、先ほど紹介した永平寺の新しい木造の宿が誕生する予定です。門前町の散策が、より楽しくなるはずですね。

仏教学者の鈴木大拙、永平寺でも修業した禅マスター(禅師)の鈴木俊隆などの活躍により、禅は欧米でも着実に広まっています。

筆者も先日カナダに取材に行ったとき、日課として禅を取り入れているというカナダ人の映画関係者に出会いました。米国では当たり前に禅が流行していると友人のアメリカ人ライターたちも語ります。

そうしたニーズを取り込む目的で、福井県と永平寺町、永平寺は、ブランドスローガンに『ZEN』を掲げ、周辺のブランド力アップに取り組んでいます。

永平寺は京都や奈良などにある、国宝や重要文化財の建築物を楽しませるタイプの神社仏閣ではありません。しかし、その手の観光寺では味わえない、修行僧が暮らす凛とした静寂と緊張感が楽しめます。

福井は関西方面からも、北陸新幹線の延伸を2022年に控えた関東方面からも、アクセスは悪くはありません。ぜひとも一度,訪れてみてくださいね。

  • 大本山 永平寺
  • 福井県吉田郡永平寺町志比5-15
  • 0776-63-3102
  • 5月~10月 8:00~17:30/11月~4月 8:30~17:00(行持の都合により、時間が変わる場合があります。)
  • 公式サイト
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翻訳家・ライター・編集者。成城大学文芸学部芸術学科卒。富山在住。主な訳書『クールジャパン一般常識』、新著(共著)『いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日』。北陸のWebメディア『HOKUROKU』創刊編集長。WebsiteTwitter 

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